生体エネルギー学の臨床(5)エストロゲンについて

2002年のWHI試験で、ホルモン補充療法(HRT)は乳がんリスクを26%上昇させた。閉経でエストロゲンの総量(E1+E1S+E2+E3)は増加している。E2(エストラジオール)ではなく、プロラクチンとE1S(エストロン硫酸)による評価が必要である。乳がんはアロマターゼ欠損動物で発症しない。AI薬の代わりにプロゲステロンで代用できる。乳がん以外に、腎がん、子宮内膜がん、メラノーマはエストロゲン依存性である。ちなみに、アルコールはプロラクチンとエストロゲンを増加する。注)アロマターゼ:アンドロゲンをエストロゲンに変換する酵素

エストロゲンコルチゾールは胸腺を萎縮させて免疫能を低下させ、老化とがんの原因となる。エストロゲンの細胞増殖効果はヒスタミンとコリンを介する。ヒスタミンエストロゲン受容体を増やす。子宮頸がんはHPVではなくエストロゲンヒスタミンが主な原因で、プロゲステロンが抑止する。

エストロゲンはワーバーグ効果を引き起こす。エストロゲン受容体と類似する核内受容体であるエストロゲン関連受容体(ERRs)を通してHIF(低酸素誘導因子)などの発がんシグナルパスウエイが活性化し、解糖系の増加、乳酸産生の増加、脂肪酸酸化の増加、糖酸化の低下を引き起こす。ERRsはミトコンドリアの酸化代謝のマスターレギュレーターである。

ストレス、キセノエストロゲンBPABPS、フタル酸、イソフラボンレスベラトロールなど)、避妊薬は、エストロゲンアゴニストで、アンドロゲンと甲状腺のアンタゴニストである。飽和脂肪酸SFA)はエストロゲンアンタゴニストで、一価不飽和脂肪酸(MUFA)は中立、多価不飽和脂肪酸(PUFA)はエストロゲンアゴニストである。SFAとPUFAのエストロゲン受容体親和性は同じなので、SFAを倍量にすることでPUFAのエストロゲン効果を減らすことができる。また、重金属(カドミウム、ニッケル、鉛、鉄など)もエストロゲン性が高い。

コルチゾールはアロマターゼ発現を刺激しエストロゲン合成を増やす。エストロゲンはACTH分泌を刺激しコルチゾール合成を増やす。エストロゲンコルチゾールセロトニン合成とセロトニン受容体を増やす。セロトニンはACTH分泌を刺激しコルチゾールエストロゲンを増やす。エストロゲンコルチゾールセロトニンは相互に刺激しあい増加させる。これらの内分泌異常はミトコンドリア機能を低下させ、肥満、糖尿病、脳心血管疾患、自己免疫疾患、精神疾患、神経変性症、自己免疫疾患、がん、老化の原因となる。

 

エストロゲンSFA増加/PUFA低下、プロゲステロン、ナリンゲニン/アピゲニン(フィトプロゲステロン)、DHT、アスピリン、シプロヘプタジン/ケトチフェン/ファモチジン、ビタミンB群、E、A、K2、SERM(タモキシフェンなど)。

アロマターゼインヒビター:プロゲステロン、ビタミンE、A、K2、エモジン、ラパコン、Se、AI(アナストロゾールなど)

 

注)参考文献を確認したい方は、Ray Peat Forum(https://raypeatforum.com/community/)でキーワード検索してください。(例えば、Haidut, estrogen, cancer)HaidutはGeorgi Dinkovのペンネームです。