Bioenergeticsでは、「細胞(生体)の構造と機能はエネルギーに依存する」と考える。私たちの健康は、食事(炭水化物、タンパク質、脂肪)から如何にエネルギーを産生するかに依存する。
私たちは主に糖か脂肪酸を代謝(酸化)してエネルギー源とする。糖はミトコンドリアで効率よくエネルギーに変換され、最終的に二酸化炭素と水に代謝される。一方、脂肪酸(特に多価不飽和脂肪酸:PUFA)はミトコンドリアで過剰な還元ストレスを生み出してエネルギー産生を滞らせる。これにより生じた活性酸素はPUFAをマロンジアルデヒド(MDA)などの毒性の高い過酸化脂質に変えて細胞を傷害する。さらに、PUFAからプロスタグランジンやロイコトリエンなどの炎症性メディエーターが合成され、全身で炎症を増大させると共にインスリン抵抗性を引き起こす。また、脂肪酸がエネルギー源になると、ミトコンドリアのランドル回路(糖脂肪酸回路)により糖の酸化利用は抑制され、脂肪合成が促進される悪循環を生み出す。
また、代謝と内分泌は表裏一体の関係にある。代謝の異常は内分泌の異常を伴い、内分泌の異常は代謝の異常を伴う。慢性的なコルチーゾル、エストロゲン、セロトニンの上昇は代謝を低下させ、甲状腺、アンドロゲン、ドパミンの上昇は代謝を増加する。PUFAはコルチゾール、エストロゲンを活性化し、飽和脂肪酸(SFA)は不活化する。
さらに、腸内細菌の内毒素(エンドトキシン)により腸管はセロトニンとNOを大量に産生し、マクロファージや樹状細胞の他にも様々な組織で発現が認められるTLR4受容体を活性化することにより、免疫反応と炎症を引き起こし、全ての慢性疾患の原因となる。PUFAは腸管バリアを損傷してエンドトキシンの血液への流入を増やすが、SFAは腸管バリアを保護する。
注)参考文献を確認したい方は、Ray Peat Forum(https://raypeatforum.com/community/)でキーワード検索してください。(例えば、Haidut, PUFA, Diabetes)HaidutはGeorgi Dinkovのペンネームです。