新しい心疾患予測式はスタチン患者を40%減らす

2013年にAHA/ACCは、40-79歳の心筋梗塞脳卒中の10年リスクを評価する、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスク予測式(PCEs)を発表した。同年のスタチンガイドラインと合わせて、スタチン内服患者は二次予防も含め2012-13年の3700万人から、2018-19年には9200万人に増加した。(Saudi Pharm J.2023)

2023年11月、AHAは過去10-20年間の人口変動と心血管疾患の傾向の変化を反映した新たな10年ASCVDリスク予測式(PREVENT)を発表した。PREVENTは人種を除外し、腎機能、肥満、糖尿病、社会経済状態とスタチン使用を変数に加味した。

2017年-2020年米国全国健康栄養調査(NHANES)に参加した40-75歳でASCVDの既往のない人3785人(平均55.7歳、52.5%が女性、20.7%がスタチン内服中)を対象とした横断的研究 (cross-sectional study)で、10年ASCVDリスクはPCEsでは8.0%、PREVENTでは4.3%であった。つまり、米国の一次予防スタチン対象者数は、PCEsでは4540万人、PREVENTでは2830万人となる。PREVENTがガイドラインに採用された場合、スタチンが必要な患者はおよそ40%減り、現状のスタチン患者の410万人が対象外となる。(JAMA Intern Med. 2024)

1990年にスタチンが発売されてから30年以上経過するが、心疾患は1921年から米国死因の第一位のままであるだけでなく、2010年代後半から2020年までの間に心疾患による死亡は増加している。(AHA 2024 Heart Disease and Stroke Statistics report)つまり、スタチンは心疾患の上昇傾向を妨げることはできなかった。それどころか、スタチン内服患者の糖尿病、うつ、認知症、筋肉障害、白内障、がんのリスクを高めることが判明している。実際、60歳以上でコレステロールの低下は総死亡率を増やす。コレステロールと心疾患の間に明らかな相関は認めない。(BMJ Open.2016)

今回、ASCVD一次予防におけるスタチンの有効性を下方修正したに過ぎないかもしれないが、これまでタブー視されてきたスタチン偏重の臨床に一石を投じたことは間違いない。スタチンの有効性を、科学的かつ公正に検証される日はそう遠くはないと切に願う。

https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2819821

PUFAの有害性

全ての油脂は、飽和脂肪酸SFA)、一価不飽和脂肪酸(MUFA)、多価不飽和脂肪酸(PUFA)からなる。SFAコレステロールが心血管疾患の原因であるとする仮説の基に、PUFAが主体である植物油(いわゆるサラダオイル)の摂取を推奨する食事ガイドラインが1980年に発出された。しかし、その後、多くの疫学的研究でPUFAの危険性が指摘され、ミネソタコロナリー試験などの介入試験でも、心血管疾患を起こすのはSFAではなくPUFAであることが証明された。他にも、肥満、糖尿病、うつ、アルツハイマー病、肝疾患、腎臓病、自己免疫疾患、がんなどの疾患や老化の原因となる。改めて、PUFAの有害性を列挙する。

PUFAはミトコンドリア機能障害を引き起こす

食事PUFAはSFAやMUFAの様に酸化利用されず、脂肪組織に貯蔵されるため、リポライシスで生じる遊離脂肪酸のほとんどはPUFAとなる。PUFAはピルビン酸脱水素酵素(PDH)を不活化し、グルコース酸化を抑制し、脂肪酸酸化を促進する。一方、SFAグルコースはPDHを活性化し、グルコース酸化を促進する。PUFAの酸化は活性酸素(ROS)を産出し、ミトコンドリア内膜のカルジオリピンを損傷して電子伝達系酵素群を不活化し、ミトコンドリア機能障害を引き起こす。

PUFAは免疫抑制物質で発がん物質

PUFAはエストロゲンコルチゾールと同様に胸腺を萎縮し、免疫能を抑制する。2002年、NIHは「エストロゲンは発がん物質」と公表した。PUFAはキセノ(異種)エストロゲンで発がん物質であり、細胞膜酸素輸送を障害して酸素利用能を低下させ、血管新生を促進する。SFAはPUFAアンタゴニストで、がんの発症と成長を抑制する。

PUFA代謝物であるプロスタグランジンとロイコトリエンは主な炎症パスウエイ

炎症の大部分はプロスタグランジンとロイコトリエンにより生じる。どちらも、ヒスタミンセロトニンの合成を誘発し、炎症を拡大する。プロスタグランジンはシクロオキシゲナーゼ(COX)発現を増やし、プロスタグランジンをさらに増加させる悪循環を引き起こす。COXの活性化はがん成長を促進する。

PUFA過酸化物による細胞毒性

PUFAによるROSの増加により、PUFAからマロンジアルデヒドMDA)や4ヒドロキキシノネナール(4HNE)などの過酸化物が生じ、細胞や組織を傷害する。MDA、4HNEなどのアルデヒドアルデヒドヒドロゲナーゼ(ALDH)により不活化される。アンドロゲンはALDH発現を増やし、エストロゲンはALDH発現を減らす。加熱によりアルデヒドは100-200倍に増加する。

PUFAはエストロゲン性で、コルチゾールを増やし、アンドロゲンを減らす

PUFAはフタル酸、ビスフェノール、パラベンに匹敵するくらいエストロゲン性が強い。PUFAはエストロゲン受容体アゴニストで、アンドロゲンとプロゲステロンのアンタゴニストである。SFAエストロゲン受容体アンタゴニストである。

PUFA(>MUFA)は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を促進しコルチゾール合成を促進するが、SFAは抑制する。また、PUFAは11b-HSD1発現の増加により、ACTH依存なしにコルチゾール合成を促進する。PUFAとMUFAはアンドロゲンを減らし、SFAコレステロールはアンドロゲンを増やす。また、PUFAは甲状腺機能を低下し、SFAは増加する。PUFAは内分泌かく乱因子で、その強さは不飽和度に依存する(ω3>ω6)。

PUFAは腸管セロトニンを増加する

PUFAはトリプトファン水酸化酵素を活性化し、トリプトファンからセロトニンの合成を促進する。また、PUFA(アラキドン酸)はセロトニントランスポーター(SERT)の発現を低下させ、セロトニンを増やす。セロトニンリノール酸からアラキドン酸の合成を促進し、悪循環が生じる。セロトニンは腸管バリアを障害し、エンドトキシンの血液への侵入を許し、TLR4受容体が活性化され、全身に炎症を引き起こす。セロトニン代謝を低下させる。

PUFAは細胞膜透過性を増やす

PUFAとエタノールは細胞膜透過性を増やし(親水性)、毒、エストロゲンコルチゾールなどの細胞内侵入を容易にするが、SFAは細胞膜構造を強化し(疎水性)、細胞内侵入を予防する。PUFAは細胞浮腫の原因となる。

PUFAの1日必要量は摂取カロリーの0.5%以下、1-2g/日程度で十分

PUFAは必須とは言えない。リノール酸もαリノレン酸もデノボ合成はできないが、食事由来の脂肪酸(16:2n6や16:3n3など)の伸長により合成は可能である。アメリカ人は平均して1食につき10g以上のPUFAを摂取している。摂取カロリーの約20%を100年前には存在しなかった植物油から得ている。

PUFA対策

植物油の使用を中止する。バター、ココナッツオイルに代える。低脂肪食を心がける。リポライシスを制限する。肥らないホルモン環境を維持する(コルチゾールエストロゲンを減らし、アンドロゲンを増やす)。

 

注)参考文献を確認したい方は、Ray Peat Forum(https://raypeatforum.com/community/)でキーワード検索してください。PUFA疫学データについては、過去記事「植物油は危険である(疫学編)」https://www.facebook.com/muramo10/posts/751390208687249を参照してください。

 

減量における注意点

“Eat less, Move more”というマントラを、減量における絶対的真理と考える人はとても多い。摂取カロリーを減らしてエネルギー消費を増やせば、確かに痩せる。しかし、基礎代謝量(BMR)が低下するため、一時的に痩せることができても必ずリバウンドを引き起こす。どんなに見た目が改善しても、エネルギー不足は生命活動を縮小し、健康を害する。

減量を始める前に、年齢、性別、適正体重、ライフスタイルに見合うエネルギーを摂取し、十分なBMRを確保することが重要であり、それから消費エネルギーを少しずつ増やすことで減量するのが良い。

消費エネルギーはBMR身体活動代謝、食事誘導熱産生の3つからなる。BMRは生命を維持するために最低限必要なエネルギーで、消費エネルギーの60-70%を占める。身体活動代謝は運動とNEAT(非運動性熱産生)からなり、消費エネルギーの20-30%を占める。NEATは日常生活の中で行う運動以外の生活活動であり、仕事や洗濯・掃除・料理・買い物・犬の散歩・ゴミ出しなどの家事、子供の世話などをさす。食事誘発性熱産生は食事による熱産生と消化に要するエネルギーで、消費エネルギーのおよそ10%を占める。

BMRを増やすために、朝食を摂ることを勧める。朝食型の方が夕食型よりBMRが高く、熱産生が大きい。絶食は8-10時間で十分である。自分で調理した食べ物を摂取する。PUFAを減らし、ビタミン、ミネラルをしっかり補充するために、加工食品や外食を避ける。カルシウム摂取量を増やす。熱産生が増加し、脂肪合成が低下する。ミルク、チーズなどの乳製品を積極的摂取する(リンも同時に増えるので、腎不全患者は注意が必要)。食べ物日記を付けて、マクロ栄養を把握する。脂肪酸化を減らし、ブドウ糖酸化を増やして、乳酸産生を減らすPFCバランスを探す(生体エネルギー学参照)。筋肉量を増やす。筋肉のエネルギー消費量は基礎代謝で最も大きい。他臓器と異なり、筋肉を増やすことは可能である。週1時間弱の筋トレで肢や腹などの大きな筋肉を鍛えるのが良い。筋肥大ではなくミトコンドリアの増加が目標であるので、コンセントリックな筋トレが望ましい。(階段上り、自転車、ローイングなど)

NEATを増やすには、座っている時間を減らし、立位や歩く時間を増やすだけで良い。ほとんどの人が運動よりNEATが多いので、改善による影響は大きい。運動は歩くだけで十分である。少なくとも8000歩程度(およそ6km、1時間位)は必要であろう。ラン、自転車などの持久性スポーツをする際には、グリコーゲンが枯渇しないレベルに留めることが重要である。

減量には時間がかかる。BMRを維持しながら、少しずつ消費エネルギーを増やす工夫をして、気長に続けることが大事である。

 

4つのユースホルモン(3)

DHEA

11b-HSD1インヒビターでコルチゾール活性化を抑制し、かつ11b-HSD2アクチベーターでコルチゾールの不活化を促進することにより、コルチゾールアンタゴニストとして働く。11b-HSD1は年と共に増加するが、11b-HSD2は年齢で変化しない。また、21-hydroxylase、11β-hydroxylaseを抑制し、コルチゾール合成を減らす。

アロマターゼインヒビターであるが、高濃度ではエストロゲンに変換されやすい。P5、P4はDHEAのエストロゲンへの変換を防ぐ。また、老化による17-20lyaseの低下によりDHEA合成は低下する。

アンドロゲン前駆物質で、ステロイドホルモン合成を促進する。ジヒドロテストステロン(DHT)増加により、運動と同様にインスリン抵抗性を改善する。また、ATP感受性Kチャンネルインヒビターとしてインスリン分泌を促進する。

がん治療には細胞の高代謝活性酸素(ROS)産生と酸化状態の維持が必要である。ペントースリン酸経路のグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)はROS産生を抑制し、がんの成長を促進する。DHEAはG6PDの主なインヒビターであり、がんのキルスイッチである。エストロゲンや低酸素/HIF-1による還元状態はG6PDを活性化し、がんの成長を促進する。P5、P4、アンドロゲン、長鎖飽和脂肪酸もG6PDを抑制する。

その他、エンドトキシン、セロトニン(TPHインヒビターでもある)、コリンのアンタゴニストである。

 

T3(トリヨードサイロニン)

健康な人はおよそ100µg/日のT3を産生する。過剰なT3は、脱ヨード酵素により素早くT2やT1に変換され無駄になる。甲状腺はサイロキシン(T4)とT3をおよそ4:1で産生する。T4はプロホルモンであり、T3受容体をほとんど活性化しない。

循環するT4の80%は肝臓でT3に変換される。残りの20%は末梢組織でT3に変換される。過剰なT4は素早くrT3に変換されるが、rT3は甲状腺ホルモンアンタゴニストとして働くので危険である。甲状腺機能低下症は肝機能を低下するため、過量なT4摂取はrT3に変換されやすい。

T3は代謝を促進し、ステロイドホルモン合成を促進する。コルチゾールエストロゲン、PUFA、エンドトキシンはT4→T3変換を阻害し、Mg、K、Ca、Zn、Se、ビタミンABDEK、炭水化物、コラーゲンはT4→T3変換を促進する。T3はアロマターゼインヒビターである。また精巣ライディッヒ細胞のテストステロン合成を高める。

 

4つのユースホルモン(2)

プレグネノロン(P5)

グルココルチコイドアンタゴニストで、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)の最も強力なインヒビターでHPA軸を抑制し、11b-HSD1インヒビターでコルチゾール活性化を抑制する。また、ミネラルコルチコイド受容体(MR)アンタゴニストでもある。

エストロゲンアンタゴニストで、主にP4に変換することによる。また、アロマターゼインヒビターでもある。

P4と共に性腺の萎縮を防ぎ、性腺ホルモンの最適化をもたらす。性腺活性は甲状腺活性と相関するので、アンドロゲンアゴニストであり、甲状腺アクチベーターである。

エンドトキシン(TLR4)、ヒスタミンセロトニン、コリン、プロスタグランジンのアンタゴニストで、グリシン受容体アゴニストである。炎症系の過剰反応をブロックし、炎症促進性サイトカインの発現を低下させる。

また、電子伝達系のC1、C2機能を改善する。運動能を高め、運動後の回復を助ける。

コレステロールからP5合成はステロイドホルモン合成経路の律速段階である。コレステロール側鎖切断酵素(チトクロムP450SCC)の活性化は、酸化状態であること(NAD+が十分)とATPレベルに依存するため、老化によりステロイドホルモン合成は低下する。低コレステロールはP5合成低下の原因となり、がんリスクを増加させる。

 

プロゲステロン(P4)

グルココルチコイドアンタゴニストで、グルココルチコイド受容体を直接ブロックし、CRHと副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の放出を抑制し、かつ11b-HSD1インヒビターでもある。また、P5と同様にMRアンタゴニストである。

エストロゲン受容体アンタゴニストでアロマターゼインヒビターである。また、低容量ではアンドロゲン受容体アゴニストであり、甲状腺アクチベーターでもある。

エンドトキシン(TLR4)、ヒスタミンセロトニン(5-HT3受容体)、コリン、プロスタグランジンのアンタゴニストである。P5と共に、炎症系の過剰反応をブロックし、炎症促進性サイトカインの発現を低下させる。また、グルタミン酸系を抑制し、GABA系を活性化し、脳の興奮を低下させる。

Caチャンネルブロッカー様に血圧を低下させ、QT延長を抑制し抗不整脈効果を発揮する。一方、エストラジオールはQT延長により不整脈誘発性がある。

P5、コレステロールと共に抗ウイルス効果がある。

 

アロプレグナノロン(ALLO)

ALLOはP5、P4の代謝物である。CRHとACTH分泌を抑制し、GABAアゴニストであり、エンドトキシン(TLR4)、セロトニン(5-HT3受容体)アンタゴニストである。また、胆汁酸受容体(TGR5)を活性化、T4からT3への変換を促進する。特に脳のエネルギー産生を刺激し、脳の炎症を減らすことで、脳神経精神疾患を予防する。

 

4つのユースホルモン(1) 

多価不飽和脂肪酸(PUFA)を減らし、腸内細菌叢のバランスを整え、アスピリン、ビタミン、ミネラルなどを補充しても、エネルギー代謝を十分に改善できないことがある。その原因はストレス(コルチゾール過多)であることが多い。代謝と内分泌ホルモンは表裏一体であるため、ホルモンバランス異常の修正は極めて重要となる。

老化でプレグネノロン(P5)、プロゲステロン(P4)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は低下するが、コルチゾールは低下しない。思春期から35歳くらいまでは、コルチゾールと共にDHEAも上昇し、ストレス耐性を維持するが、それ以降は副腎網状帯の萎縮によりDHEAの合成が低下し、ストレス耐性は急速に低下する。コルチゾールは性腺ホルモン合成を抑制すると共に、副腎網状帯の再生を阻止する。

コルチゾール脂肪酸合成と脂肪酸酸化を促進し、ブドウ糖酸化を抑制(ピルビン酸脱水素酵素(PDH)を抑制)する結果、乳酸、低酸素誘導因子(HIF-1)と血管新生を増加させる。これらは全てがん代謝異常のホールマークである。

また、コルチゾールはアロマターゼ(エストロゲン合成酵素)を活性化しエストロゲンを増加させる。コルチゾールによる脂肪組織の増加はアロマターゼの発現を増やし、エストロゲン合成を助長する。エストロゲン合成が増えるほど、甲状腺機能は低下し、DHEAレベルは低下し、両性腺は萎縮する。

コルチゾールエストロゲンの過剰は胸腺を萎縮させ、がんや老化の原因となる。胸腺再生のために、P5、P4、DHEAの補充が必要である。コルチゾールエストロゲンを直接低下させると共に、副腎網状帯と性腺からの保護ステロイド合成を回復させる。コルチゾール/DHEA比は総死亡率と疾病率の最も優れた予測因子である。

P5、P4、DHEAにトリヨードサイロニン(T3)を加えた4つのユースホルモンは、エネルギー代謝を活性化し、抗コルチゾール・抗エストロゲン効果により、多くの成人に健康利益をもたらす。米国で、P5、P4、DHEAはサプリメントとして店頭販売されており、日本に輸入可能である。T3は医師の処方箋が必要である。

注)参考文献を確認したい方は、Ray Peat Forum(https://raypeatforum.com/community/)でキーワード検索してください。(例えば、Haidut, progesterone)HaidutはGeorgi Dinkovのペンネームです。

 

GABA(γアミノ酪酸)を増やそう!

GABA(γアミノ酪酸)は、脳、脊髄から放出される抑制性神経伝達物質です。GABA受容体に結合して、神経細胞内に塩化物イオン(Cl-)を流入させて、神経活動を抑制(過分極)します。鎮静、抗けいれん、抗不安、抗ストレス効果があり、自閉症、うつ、不安、不眠症、反すう思考、けいれん(てんかん)、薬物乱用、線維筋痛症、慢性疼痛などの治療に臨床応用されています。

GABAはアミノ酸であり、化学構造がそっくりなグリシン、βアラニン、タウリン、テアニンなどのアミノ酸はGABA効果を促進します。また、アルコール、ベンゾジアゼピン睡眠薬)、バルビツール酸(麻酔薬)、プレガバリン(鎮痛薬)、ガバペンチン(抗てんかん薬)などもGABA効果を促進します。さらに、プロゲステロン、プレグネノロン、アロプレグナノロン、アンドロステロン、5αDHP、DHTなどのステロイドもGABA効果を促進します。他にも、ドーパミン、ビタミンB6、ナイアシナミド、アスピリン甲状腺ホルモン(T3)、飽和脂肪酸SFA)、笑気(N2O)もGABA効果を促進します。

一方、グルタミン酸、コリン、セロトニンコルチゾールエストロゲン不飽和脂肪酸(PUFA)はGABA効果を抑制します。

グリシンはGABA効果の促進に加え、ミトコンドリア機能を改善し、酸化ストレスを軽減し、インスリン感受性を改善し、胃腸の健康を促進し、エンドトキシンとTLR4受容体に拮抗します。ゼラチンはコラーゲンを加熱変性したもので、成分の30%はグリシンから成ります。ゼラチンをスープに溶かして摂取することで、容易にGABA効果を促進することが可能です。