ゼラチン/グリシンは健康に欠かせない

コラーゲンは体のタンパク質のおよそ30%を占めます。コラーゲンは、皮膚、骨、腱、靭帯、軟骨、血管などの細胞外基質の主成分で、組織構造の骨組みとなり、強度を維持しながら伸縮を可能にしますが、加齢に伴い低下します。

コラーゲンを加熱変性したものがゼラチンです。コラーゲンは水に溶けませんが、ゼラチンは水溶性で、温めると溶け、冷すと固まるゾル化・ゲル化が可能になります。コラーゲンとゼラチンのアミノ酸組成は同じですが、消化吸収はグリシンが勝ります。

ゼラチンのおよそ30%を占めるアミノ酸グリシンです。グリシンは加齢に伴うミトコンドリア機能障害を改善することで私たちの老化を緩和します。また、グリシンは強力な内因性抗酸化物質グルタチオンの構成成分でもあり、酸化ストレスによる細胞傷害を予防します。グリシン代謝を促進して炎症を抑制するので、多くの変性疾患や炎症性疾患を改善します。

赤肉に豊富なメチオニンヒスチジントリプトファンシステインは、逆に、代謝を抑制して炎症を促進するので、これらのアミノ酸の過剰摂取は私たちの寿命を短縮します。また、トリプトファンセロトニンの前駆物質であり、セロトニン代謝を抑制して炎症を促進する上、ストレスホルモンであるコルチゾール生成を刺激します。また、ヒスチジンは炎症性メディエーターであるヒスタミンの前駆物質です。グリシンはこれらのアミノ酸に拮抗して、細胞傷害を予防/治療することができます。アラニンやプロリンにもグリシンと同様な効果があり、ゼラチンの摂取がより有効と思われます。

また、ゼラチン/グリシンは脂肪組織の脂肪分解を抑制することでインスリン感受性を改善し、高血糖、高中性脂肪を予防します。持続的な脂肪分解やインスリン抵抗性は全ての慢性疾患に関連するので、ゼラチン/グリシンの摂取はとても合理的と言えます。

他に、グリシンは抑制系神経伝達物質として働き、脳神経変性疾患を予防治療します。

また、グリシンは5α還元酵素を活性化し、アロプレグナノロンとデヒドロテストステロン(DHT)を増やし、コルチゾールエストロゲンの不活化を促進します。アロプレグナノロンは肝臓の胆汁酸受容体(TGR5)を活性化し、甲状腺ホルモンT4→T3の変換を促進し、代謝を増加します。

また、グリシンはエンドトキシンとTLR4受容体のアンタゴニストであり、腸内細菌に関連する様々な疾患を予防/治療します。また、グリシンはウイルスのカプシド形成を予防し、普遍的な抗ウイルス効果があります。

さらに、グリシンは胃腸の健康を促進します。代謝を促進するアスピリンの吸収を増やし、アスピリンによる胃腸傷害を完全に取り除いでくれます。

私たちは、先祖の様に、結合組織を含めた動物の全ての組織を食べる食事をとらないため、多くの人でコラーゲンが毎日10g程度不足しております。コーヒーやスープに3-5gのゼラチンを溶かして1日に2、3回摂取することを強くお勧めします。

コラーゲン/ゼラチン/グリシン欠乏関連疾患

不眠症、せん妄、統合失調症てんかん脳卒中、肥満、脂肪性肝疾患、アルコール性肝障害、脂質異常症、糖尿病、糖尿病性神経症、心血管疾患、逆流性食道炎、出血性潰瘍、炎症性腸疾患、骨関節炎、骨粗鬆症、がん、老化など。