生体エネルギー学の臨床(6) プレグネノロン、プロゲステロンについて

ステロイド産生

コレステロールからプレグネノロンへの変換は全ての細胞のミトコンドリア内で生じ、甲状腺ホルモンが刺激する。老化でコレステロールが増加するのはステロイド産生低下による。老化でプレグネノロン、プロゲステロン、DHEAが低下するが、コルチゾールは増加する。思春期から30代半ばまではDHEAが上昇しコルチゾールのアンタゴニストとして働くと共にアンドロゲンの前駆物質となる。しかし、高コルチゾールが続くとDHEA合成層(網状帯)は萎縮し、コルチゾール合成層(束状帯)のみが残る。コルチゾールは性腺のステロイド合成を抑制しアロマターゼを活性化する。プロゲステロン、プログネノロン、DHEAを補充することで、コルチゾールを減らし、網状帯を再生し、性腺ホルモン合成を回復する。

 

プレグネノロ

プレグネノロン(>プロゲステロン)は最も強力なCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)インヒビターで、HPA軸を不活化し、副腎のコルチゾール合成を抑制する。

プレグネノロンはプロゲステロン、DHEA、テストステロンを増やし、成長ホルモンを減らし、甲状腺ホルモンを増やす(T4→T3への変換を促進)。DHT、アンドロステロンもT4→T3への変換を促進するが、コルチゾールは抑制する。

プレグネノロンはアロマターゼインヒビター(AI)で5ARアクチベーターであり、DHEAのエストロゲン化を防ぎ、DHTへの変換を促進する。プレグネノロンにエストロゲン抑制効果はないが、プロゲステロンになりアンタゴニストとなる。また、プレグネノロンとプロゲステロンは強力なアルドステロンアンタゴニストである。

プレグネノロンは代謝を活性化し、肥満とインスリン抵抗性に有効である。

 

プロゲステロン

プロゲステロンはグルココルチコイド受容体(GR)と鉱質コルチコイド受容体(MR)とエストロゲン受容体(ER)の最強のアンタゴニストでAIである。さらに、セロトニン合成ホルモン(TPH)を抑制し、甲状腺ホルモンを増加し、エンドトキシンを直接不活化しかつTLR4をブロックし、アドレナリンを抑制することで、代謝を促進し老化を予防する。プロゲステロンはGRアンタゴニストであるだけでなく、ACTH放出を減らし、コルチゾール合成酵素(11b-HSD1)を抑制することでコルチゾール合成を抑制する。

プロゲステロン代謝物である5αDHPとアロプレグナノロンは神経変性疾患で重要な役割を果たす神経ステロイドである。共にGABAアゴニストで、グリシン受容体を活性化し、5-HT3受容体をブロックして抗エンドトキシン効果がある。抗不安、抗うつ、抗攻撃性、抗てんかん、抗炎症効果があり、神経変性疾患から保護する。プレグネノロンもグリシン受容体を活性化する。

うつと依存症にはコリン系が深く関与し、プレグネノロン、プロゲステロン、DHEAはコリン受容体アンタゴニストとして働く。エストロゲングルタミン酸を増やしGABAを減らし興奮性に働くが、プロゲステロングルタミン酸を減らし、GABAを増やし鎮静性に働く。グルタミン酸はHPA軸を活性化しコルチゾールとGRを増やす。

 

注)参考文献を確認したい方は、Ray Peat Forum(https://raypeatforum.com/community/)でキーワード検索してください。(例えば、Haidut, progesterone, cortisol)HaidutはGeorgi Dinkovのペンネームです。