生体エネルギー学(3)

Georgi Dinkovの3年分のブログ記事650件(1000件を超える参考文献)をようやく読み終えることが出来ました。「全ての疾患は細胞のエネルギー不足が原因である」とする生体エネルギー学を3か月間検証し、その論理性に矛盾がない事を確認できたので、当院の治療方針を大幅に修正することにしました。
生体エネルギー学では、疾患の主な原因を多価不飽和脂肪酸(PUFA)による脂肪毒性とミトコンドリア機能障害とし、その結果、全身に炎症とインスリン抵抗性を引き起こすと考えます。
今後、肥満、2型糖尿病などの慢性疾患の治療に当たっては、脂肪酸酸化を減らしてブドウ糖酸化を増やす様に導きます。つまり、糖質を制限するのではなく、糖質の酸化利用を可能な限り増やせる様に手引きしたいと考えています。逆に、厳しい糖質制限、長い絶食、消耗性の運動は脂肪酸代謝を増やすので注意が必要となります。
 具体的には、PUFA(植物油)の摂取を止め、飽和脂肪酸SFA)に変更することが最も重要です。それで不十分であるなら、アスピリン、ナイアシナミド、ビタミンEにより、脂肪分解と脂肪酸酸化を制限してブドウ糖酸化を促進します。必要があれば、エネルギー代謝異常に伴うホルモンバランスの異常(コルチゾルエストロゲンの過剰)を修正します。さらに、小腸内で消化が終わる食事を心がけ、大腸でのエンドトキシンの発生(セロトニンの過剰)を制限することも重要となります。
Ray Peat(1936-2022)がプロゲステロンの研究を始めたのが1968年で、彼の業績をまとめたホームページは2006年に設立されており、決して新しい学問ではありません。これまで脂肪毒性を考慮することなく糖質制限を推奨してきたことは慙愧に堪えませんが、偶然遭遇できたこの幸運に感謝し、速やかに修正して日々の診療に活かしたいと考えております
最後ですが、生体エネルギー学では老化もエネルギー不足よるものであり、慢性疾患と同様にエネルギー代謝の改善により予防と治療が可能と考えます。生体エネルギー学は、非常に論理的で全ての疾患に応用できる優れた概念であると感服しております。