生体エネルギー学(2) 慢性疾患の治療

血中遊離脂肪酸(FFA)の上昇は肥満、2型糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、心脳血管疾患、がんなどで増加している。(Morigny P, Biochimie. 2016)脂肪細胞の肥大、副腎ホルモン、生理的ストレス(絶食・運動)などにより、脂肪組織の脂肪分解が増加してFFAは上昇する。FFAの上昇は全身の組織に脂肪毒性を生じ、還元ストレス、小胞体ストレス、炎症、インスリン抵抗性を引き起こす。(Lipke K, Cells. 2022)

中でもミトコンドリアのβ酸化として知られる過剰な脂肪酸酸化(FAO)による還元ストレス(NAD/NADH比の低下)が最も問題となり、肥満からがんに至る幅広い病気のスペクトラムを形成する。ランドルサイクル(糖-脂肪酸サイクル)がどれだけFAOに傾き持続したかによってその重症度は変化する。ワーバーグ効果と還元ストレスにより、がんの発生、成長、転移の説明が可能であり、がんも代謝異常による疾患と考えられる。つまり、がんに観察される全ての遺伝子変異は代謝異常の二次的な結果と言える。(Zhelev Z, Oxid Med Cell Longev. 2022)

生体エネルギー学(バイオエナジェティクス)による慢性疾患の治療において、まず、多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取を中止する。次に、脂肪組織の脂肪分解とミトコンドリアにおける脂肪酸燃焼を抑制する。さらに、全身の代謝を促進する。また、細胞のエネルギー代謝は神経・内分泌機能と密接に関わり厳格に調節されており、FAO増加に伴うホルモンバランス(特にコルチゾールエストロゲン)の調整がとても重要となる。(Luo L, J Endocrinol, 2016)同様に、多くの疾患に関与するエンドトキシン(同時にセロトニン)の管理も重要である。(Perng W,J Clin Endocrinol Metab. 2022)

具体的には、アスピリン、ナイアシナミド、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンK、ビタミンA、サイアミン、リボフラビンプロゲステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、シプロヘプタジン、重曹などの安価な薬やサプリメントを組み合わせることで、肥満からがんに至るほとんど全ての慢性疾患の治療が可能となる。

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私たちの食生活に広く浸透した植物油ですが、百害あって一利ありません。疫学においても、植物油の摂取は喫煙と同じくらい死亡リスクを増加させることが分かっています。まずは植物油を排除することから始めましょう。