生体エネルギー学の臨床(3)エンドトキシンの問題点

エンドトキシン(内毒素)は、グラム陰性菌が死んで溶菌する時に遊離される外膜の構成成分LPS(リポポリサッカライドまたはリポ多糖)のことを言う。
エンドトキシンは腸管によるセロトニンとNOの合成を促進し、自然免疫細胞であるマクロファージや樹状細胞の他にも様々な組織で発現がみられるTLR4受容体を活性化する。TLR4の活性化はセロトニン、NO、IL-1,6、NFkBカスケードを活性化し炎症を引き起こす。
 PUFAは腸管バリアを損傷し、エンドトキシンの血液への流入を増やす。SFAはアルコールなどによる腸管バリア損傷を軽減し、エンドトキシンの流入を減らし、肝臓を保護する。また、SFAはTLR4活性化をブロックする。血中エンドトキシンレベルは全ての肝疾患の確かなバイオマーカーである。
エンドトキシンは肥満、糖尿病を引き起こす。マウスの実験で、無菌またはエンドトキシンフリーまたはPUFAフリーにすると、カロリーを増やしても肥らない。エンドトキシンによる慢性的な低グレードの炎症が肥満と糖尿病の原因となる。腸管の殺菌はインスリン抵抗性を改善する。
TLR4の活性化は精神病、神経変性症、糖尿病、がんなどの全て慢性疾患で認められ、エンドトキシンだけでなく、細胞デブリスもTLR4を活性化する。がんのカヘキシア(悪液質)はエンドトキシンによるTLR4による組織破壊により、慢性心不全、自己免疫疾患、老化のカヘキシアにも共通する。エストロゲンレベルが高いとエンドトキシンの変化に敏感になる。
エンドトキシンはアラキドン酸メディエーターなしで直接炎症を引き起こす。IL-1,6、TNFαなどサイトカインによる。ウイルス感染症におけるサイトカインストームにはエンドトキシンによるTLR4活性化が関与する。エンドトキシンとTLR4のブロックはウイルス感染症(COVID-19/ARDS)による死亡を防ぐ。エンドトキシンなしにHIV感染症はAIDSを発症しない。
腸内細菌は全ての自己免疫疾患の原因である。ループス患者の腸間膜リンパ節、肝臓にグラム陽性菌であるエンテロコッカス属が検出され、病原菌に対する抗体が産生され、自己免疫反応を引き起こす。抗菌薬が有効である。
腸内細菌に善玉も悪玉もない。ヨーグルトやザワークラフトなどの発酵食品やプロバイオティクスなどの乳酸菌(グラム陽性菌)は脳に毒性のあるD乳酸を産生し、ブレインフォグや疲労やSIBO(小腸内細菌異常増殖)を起こす。オピオイドPPISSRIなどを服用し、腸蠕動運動が低下している患者でより発症しやすい。抗菌薬で治療可能である。また、マウスで乳酸菌によるTLR7を介したループス(全身性エリテマトーデス)の発症が報告されている。プロバイオティクスの使用は全く安全とは言えない。注)私たちの組織は主にL乳酸を産生する。(つづく)
TLR4アゴニスト:PUFA、アルコール、オピオイドマリファナSSRIてんかん薬など。
TLR4アンタゴニスト:コレステロール、プレグネノロン、プロゲステロン、ナルトレキソン、アミトリプチン、シプロヘプタジン、オレンジジュース、ビタミンD/A、リボフラビン、エモジン、グリシン/ゼラチン、ミノマイシン
エンドトキシンアンタゴニスト:抗菌薬、SFA/MCT、活性炭、不溶性繊維(ニンジンサラダ)、プロゲステロン、オレンジジュース、ビタミンK2。
腸管バリアの保護:Mg、ナイアシナミド、ビタミンA/E、テアニン、グリシン/ゼラチン、シプロヘプタジン、オンダンセトロン、PUFA/アルコールの回避、運動の回避。
注)参考文献を確認したい方は、Ray Peat Forum(https://raypeatforum.com/community/)でキーワード検索してください。(例えば、Haidut, PUFA, Diabetes)HaidutはGeorgi Dinkovのペンネームです。