ビタミンDとレニン・アンジオテンシン系の相互関係

レニン・アンジオテンシン系(RAS)は血圧を調節するために血液量と体血管抵抗を調整する重要な働きをする。アンジオテンシンIIとアンジオテンシン(1-7)はRASを正しく機能させるために非常に重要な因子である。(Simko F., Int. J. Mol. Sci. 2021)

アンジオテンシン返還酵素2(ACE2)はアンジオテンシンIIをアンジオテンシン(1-7)に変換する働きがある。アンジオテンシンIIは主に血管収縮に働くが、拮抗するアンジオテンシン(1-7)がないと炎症、繊維化、酸化ストレスを引き起こす。ACE2はSARS-CoV-2の主な受容体であり、SARS-CoV-2はACE2の活性を低下させ、アンジオテンシンIIレベルを増加させ、アンジオテンシン(1-7)レベルを低下させる。この影響はSARS-CoV-2由来の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を最終的に引き起こす。(Imai Y., Cell Mol. Life Sci. 2007)ビタミンD3の活性代謝物質であるカルシトリオールは、レニンの発現とそれによるアンジオテンシンII合成を抑制することとACE2発現を刺激してアンジオテンシンIIからアンジオテンシン(1-7)への変換を促進することにより、この影響を最小化する。(Pouya F.D., Int. J. Infect. 2021)このように、不十分なビタミンD血中レベルは重症SARS-COV-2感染症へと発展させる。

さらに、アンジオテンシンIIレベルの増加は1αヒドロキシラーゼ酵素を減少させ、カルシトリオールの合成を抑制するため、ビタミンD欠乏による負の影響を増悪させる。( de Borst M.H., J. Am. Soc. Nephrol. 2011)

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