生体エネルギー学の臨床(10) ビタミンB群について

B1(サイアミン)

B1はDCA(ジクロロ酢酸)の様にPDKを阻害してPDHを活性化し、糖代謝を促進し、乳酸を減らす。果糖もPDHを活性化する。B1欠乏は乳酸を増加(ワーバーグ効果)し、がんの原因となる。B1はアセタゾラミドの様に炭酸脱水酵素(CA)を阻害してCO2を増やす(CO2分解を減らす)。B1+アセタゾラミドはコルチゾールを低下させる。B1はPUFAを減らす。B1+B2で肝臓のエストロゲンを不活化する。脚気やウエルニッケ脳症はエストロゲン毒による。

B1は統合失調症、MS、ALS、PD、肝硬変、IBD、橋本病、腎臓病、がんなどを治療する

 

B2(リボフラビン

B2はエンドトキシンとTLR4のアンタゴニストである。B2はMAO-Aの補因子でセロトニンを減らす。B2は糖代謝を改善し、サーカディアンリズムを調節する。B2はリポフスチンを減らし老化を遅らせる。

B2は近眼、片頭痛、敗血症、細菌感染症IBD、GIがんなどを治療する。

 

B6(ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン)

B6と活性型ピリドキサール5リン酸(P5P)はアンチストレス剤である。コルチゾールアンタゴニストでアンチアドレナリンである。グルタミン酸を減らしてGABAを増やす。ドーパミンアゴニストでプロラクチンインヒビターである。さらにエストロゲンアンタゴニストである。B6はアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)インヒビターで、脂肪酸の合成を阻害し、β酸化を促進し、肥満を改善する。B6は胃のH+K-ATPアーゼを調節しPPIとして働く。B6、Mg、ZnはNOを減らす。B6-100mgはピリドキサールリン酸P5P-10mgに相当。

B1、B2、B6、B7は肥満、糖尿病を治療する。B6は喘息、片頭痛ADHD自閉症てんかん、PD、胃潰瘍IBD、全ての炎症性疾患とがんに有効。

 

B7(ビオチン)

ビオチンはピルビン酸カルボキシラーゼ(PC)を活性化して、ピルビン酸をオキザロ酢酸に変換し、乳酸を減らし、クレブス回路を回す。PDHが働かない時にPCが働きクレブス回路を維持する。また、ビオチンはPDKを阻害してPDHを活性化し、脂肪分解を減らし、糖代謝を改善する。ビオチンはグリコーゲン貯蔵を促進する。ファモチジン、ウリジンもグリコーゲン貯蔵を促進する。ビオチンは脳と血液のアンモニア、NO、グルタミン酸を下げる。

 

注)参考文献を確認したい方は、Ray Peat Forum(https://raypeatforum.com/community/)でキーワード検索してください。(例えば、Haidut, B1, PDH)HaidutはGeorgi Dinkovのペンネームです。

 

生体エネルギー学の臨床(9) 脂溶性ビタミンについて

ビタミンD(VD)

VDはグルココルチコイド受容体(GR)とエストロゲン受容体(ER)アンタゴニストで、アロマターゼインヒビター(AI)である。また、VDはエンドトキシンとTLR4のアンタゴニストで、TPHを抑制しセロトニン合成を減らす。VD、E、K、Aは全てドーパミン性で代謝を増加する。また、VDはNOを減らしNF-kB発現を低下させ炎症を抑制する。また、VDはVKと共に骨ホルモンであるオステオカルシンの合成を促進する。VDは骨吸収を促す副甲状腺ホルモン(PTH)を抑制し、骨形成を促進する。さらに、VDはプロゲステロン、DHEA、T/DHTの合成を促進し、アンドロゲン(DHT、アンドロステロン)のグルクロン酸抱合による分解を防ぐ。

コレカルシフェロール(VD3)(25(OH)D3)はアナボリックであるが、カルシトリオール(1.25(OH)2D3)はカタボリックである(コルチゾールを増やす)。25OHD3の半減期はおよそ1日。VD2はD3の30%の効果しかなくCKD、高Caのリスクがあり、免疫能を改善しない。

VDはうつ、双極性障害ADHD自閉症片頭痛てんかん認知症、末梢神経障害、脱髄疾患インスリン抵抗性、肥満、2型糖尿病動脈硬化症、高血圧、心房細動、心不全、アレルギー、喘息、炎症性疾患、骨粗鬆症、風邪、インフルエンザ、肝線維症、肝がん、胃/大腸がんなどに有効。

 

ビタミンK(VK2:MK-4)

VKはAIでエストロゲン合成を抑制する。VKは酸化的リン酸化を促進する。VKはオステオカルシンの合成を促進し、骨の恒常性維持、膵臓β細胞のインスリン産生と脂肪細胞のアディポネクチン産生を促進し、精巣ライディッヒ細胞のテストステロン合成を促進し、骨格筋を増やし筋肉内のエネルギー利用効率を高める。

VKだけが副作用なし。VEの出血をVKが抑制。VDの高CaをVAが抑制。VAの毒性をVEが抑制。VKはアスピリンの出血リスクを減らす。MK-7(納豆)の効能は不明。

老化でK1→K2の変換は非常に遅くなる。K2はCVD、死亡率を減らすが、K1は減らさない。VKはRA、高血圧、貧血(エリスロポエチン増加)、異所性石灰化に有効。

 

ビタミンE(VE)

VE(αトコフェロール)はERアンタゴニストでAIでPUFAアンタゴニストである。VEは酸化的リン酸化を促進する。VEは運動による筋肉損傷を減らす。VEはリポフスチン(リソソームに形成される過酸化脂質の残余物)形成を予防除去し、フェロトーシス(鉄に依存した過酸化脂質蓄積によるプログラム細胞死)を予防する。VEはリーキーガットを治療し、エンドトキシンとエストロゲンによる全ての肝疾患を治療する。VEは喘息を予防治療する。VEは肺炎、ウイルス感染症を予防する。VEは脳下垂体のゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)を増やしテストステロンを増やす。VE500U以上はVKの吸収を阻害する(VKはVEと分子構造が相似)。

 

ビタミンA(VA)

VAは11b-HSD1を抑制しコルチゾール合成を減らす。VAはAIである。VAはテストステロン合成を促進し、5-ARを活性化してDHTを増やす。また、VAはエンドトキシンとTLR4のアンタゴニストである。持続的VAは甲状腺機能を低下させ、胃酸を低下し、腸内細菌を増やすのでVEとの併用がお勧め。

レチノールの活性体がレチノール酸。チョコラA(レチノールパルミチン酸エステル)はプロドラッグで10%がレチノール酸になる。VAの有毒性は誇張されている。50万単位数か月使用でも毒性徴候なし。主な副作用は乾皮症と口唇炎。VA10万単位以上の毒性はVEが減らす。VAはVDによる高Ca血症をブロックする。D:A=1:5が目安。VAは2型糖尿病白血病、肝がんなどを治療する。

 

注)参考文献を確認したい方は、Ray Peat Forum(https://raypeatforum.com/community/)でキーワード検索してください。(例えば、Haidut, vitamin d, cortisol)HaidutはGeorgi Dinkovのペンネームです。

 

生体エネルギー学の臨床(8) セロトニンについて

セロトニンの95%は腸管のクロム親和性細胞により合成され、主に腸の蠕動運動亢進に働く。セロトニンの合成は、TLR2受容体を介して、腸内細菌により完全にコントロールされている。セロトニンは酸化的リン酸化の抑制により代謝を低下させ、肥満や2型糖尿病など様々な疾患の原因となる。腸内細菌が少ないほど、セロトニンレベルは低下し、代謝が増加し、健康になる。5-HT3アンタゴニスト、セロトニン合成酵素(TPH)インヒビター、抗菌薬、活性炭、TLR2/4アンタゴニストは代謝異常を改善する。メカニカルストレス(ランなど)はセロトニン合成を刺激する。セロトニン血液脳関門を通過しないが、迷走神経を通じ脳に影響する。抹消セロトニンによるセロトニン症候群は精神錯乱や他の脳神経症状を起こす。

脳内セロトニンは脳幹の縫線核で合成され、脳に取り込まれるトリプトファンの量に依存する。トリプトファンは血中でアルブミンと結合して運搬されるが、同様にアルブミンに結合する脂肪酸の増加により、血中に遊離するトリプトファンが増加する。また、脳がアミノ酸を取り込む際、分枝鎖アミノ酸(BCAA)はトリプトファンと拮抗する。脳内セロトニン低下のためには、トリプトファン摂取を減らし、BCAAやタンパク質の摂取を増やし、ドーパミンの元になるチロシンフェニルアラニンの摂取を増やし、PUFAを避け、絶食、耐久性運動を避ける必要がある。

ストレスはセロトニンを増やしドーパミンを減らす。ドーパミンはTPHを抑制する内因性セロトニンアンタゴニストで、セロトニンドーパミンの合成を減らす。また、セロトニンは5-HT2C受容体を通してACTHを活性化しコルチゾール合成を増やし、アロマターゼとしてエストロゲンを増やす。また、セロトニンは5-HT3受容体を通してエンドトキシンによるTLR4の活性化し、エンドトキセミアによる様々な疾患の原因となる。アルコールと麻薬は5-HT3アゴニストである。また、セロトニンは5-HT2B受容体を介しては線維化を促進する。また、セロトニンはオートファジーを傷害し、免疫能を低下させ、がん発症の原因となる。セロトニンによる脳のミトコンドリア機能障害はうつ、統合失調症などの精神病やパーキンソン病アルツハイマー病などの神経変性疾患の原因となる。

セロトニンは人をプロトコール様思考に陥らせて、従順なゾンビを作り出す。選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI)はセロトニントランスポーター(SERT)を抑制することで脳内セロトニンを増加させる。抗うつ剤として最も処方量が多い薬だが、うつを改善しないどころか、アンヘドニア(何も楽しめない)を悪化させる。SSRIは知性と共感を損なわせ、暴力的にする。実際、SSRIは多くの殺人事件(銃乱射事件を含む)に関与している。成功した全ての抗うつ剤はアロプレグナノロンの増加、または、5-HT2C受容体アンタゴニストでコルチゾールの低下によるものであり、セロトニンの増加によるものではない。「幸せホルモン」として名高いセロトニンは、私たちの健康を害する危険なホルモンである。

 

セロトニンアンタゴニストでドーパミンアゴニスト:LSD、リスリド、ケタミン、ブロモクリプチン、カフェインなど

SERTアクチベーター:チアネプチン、塩、亜鉛など

SERTインヒビター:アラキドン酸、SSRIなど

5-HT2Aアンタゴニスト:トラゾドン、リタンセリンなど

5-HT2Bアンタゴニスト:カフェイン、リスリドなど

5-HT3アンタゴニスト:オンダンセトロン、プリンペラン、アロプレグナノロンなど

TLR2アンタゴニスト:ケトフェチン、シプロヘプタジン、プレグネノロンなど

5-HT7アンタゴニスト:ブロモクリプチン、リスリド、メテルゴリンなど

5-HT7アゴニスト:コカインなど

TPHアクチベーター:アセトアミノフェン、鉄、VC、還元型グルタチオンなど

TPHインヒビター:ドーパミンドーパミンアゴニスト、キニン、VB1など

セロトニン効果:ファモチジンアスピリン、ナイアシナミド、VB2(MAO-A活性化)など

 

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生体エネルギー学の臨床(7) アンドロゲンについて

アンドロゲンはアナボリックで代謝を増やし、炎症と細胞増殖を抑制し、免疫力を上げ、

寿命を延ばし、認知機能を改善する。性腺の活性は甲状腺の活性と高く相関する。ストレス、トラウマ、放射線、内分泌異常、エンドトキシン、SSRIPPI、スタチン、PUFA、NOなどがアンドロゲンレベルを低下させる。DHEA、テストステロン、DHT、アンドロステロンは5-AR(5α還元酵素)を活性化し、コルチゾールは不活化する。5-AR由来のステロイド(DHT、アンドロステロン)はアロマターゼインヒビター(AI)である。

テストステロン、コルチゾール、アルドステロン、プロゲステロンはネガティブフィードバックするが、DHT、エストロゲン、プログネノロンはポジティブフィードバックする。

抗アンドロゲン薬:オルタミド(オダイン)、ビタルカミド(カソデックス)

5-ARインヒビター:フィナステリド(プロペシアミノキシジル)、デュタステリド(アボルブ、ザガーロ)、PUFA

アンドロゲンアゴニスト:T3、パルミチン酸

 

DHEA

DHEAはグルココルチコイド受容体(GR)アンタゴニストで、11b-HSD1インヒビターで、11b-HSD2アクチベーターで、コルチゾールを強力に抑制する。また、DHEAは5-ARアクチベーターである。また、DHEAはTPHインヒビターでセロトニン合成を抑制する。さらに、DHEAはエンドトキシンを不活化する。

DHEAは高容量またはストレス下でエストロゲンに変換されやすい。経皮的投与の場合アンドロゲン(A):エストロゲン(E)比は10:1で生物学的利用度は33%。皮下投与の場合A:Eは3:1で生物学的利用度は100%。経口投与の場合A:Eは2:1で生物学的利用度は3%。皮膚は精巣に次ぎ5-ARの発現が高く、経皮投与はDHT変換効率が高い。皮下脂肪はアロマターゼ発現が高いので、皮下脂肪が少ないところに塗布する。プレグネノロンまたは甲状腺ホルモン(T3)補充は、代謝を増加し、エストロゲンへの変換を減らして、DHEA産生を増やす。T3は5-ARアクチベーターでアロマターゼインヒビター(AI)である。

 

テストステロン(T)

T欠乏により筋肉量が低下して脂肪量が増加し、インスリン抵抗性、肥満、貧血となり、骨密度、性機能、生活の質が低下する。Tはミトコンドリア生合成を促進する。精巣はブドウ糖の供給なしにTを合成できない。男性は女性の10-30倍Tを合成する。DHEAとTはエストロゲンに変換されやすい(アロマタイズされやすい)。

 

DHT(ジヒドロテストステロン)

DHTはエストロゲンアンタゴニストで、グルココルチコイドアンタゴニストで、AIである。肝臓によるエストロゲン、グルココルチコイドの排泄を促進する。DHTは11b-HSD2アクチベーターで、グルココルチコイド受容体(GR)の発現も減らす。またDHTはTPHインヒビターである。

DHTは前立腺疾患リスクの増加に無関係である。DHTを投与し血液中のDHTが増えても、前立腺のDHTに変化はない。PSA、前立腺ボリューム、前立腺上皮細胞の遺伝子発現、上皮細胞の増殖に変化はない。エストロゲン前立腺がんを促進し、T/DHTは前立腺がんを予防治療する。(ドグマの真逆)T/DHTは特にビタミンDとの併用で前立腺がんを治療する。ビタミンDはアンドロゲンの分解を抑制する。また、ビタミンK2はテストステロン合成を増やし、エストロゲン合成を抑制する。総Tレベルの低下は前立腺がんの予後悪化に直結する。また、前立腺がんにエンドトキシンが深く関与する。エンドトキシンはアロマターゼアクチベーターである。

また、DHTはセロトニン合成を減らし、がん(特に精巣)を治療する。多くのがんはTPHの過剰な発現を認め、TPHインヒビターはがん治療の可能性がある。

老化によるDHTの低下は内皮機能を低下させ動脈硬化を促進しCVDを増やす。DHTは90歳以上の男性の同化、活力、精力を元に戻し、サルコペニア骨粗鬆症、うつ、性機能を改善する。

DHTの低下は甲状腺機能低下を引き起こす。post finasteride syndrome(PFS)は甲状腺機能低下症に類似し、プロラクチン、コルチゾールコレステロール、血糖が上昇する。フィナステリドは神経を損傷し、うつ、ED、ステロイドバランス障害を起こす。5ARの阻害はDHTを減らし、グルココルチコイドとミネラルコルチコイドの除去を減らし、インスリン抵抗性や糖尿病を引き起こす。DHTはCVD、肥満、Metsの治療となる。

DHTはDHEAのエストロゲンへの変換を抑制し、DHEAはコルチゾール抑制と代謝促進を高めるので相乗効果がある。

 

注)参考文献を確認したい方は、Ray Peat Forum(https://raypeatforum.com/community/)でキーワード検索してください。(例えば、Haidut, DHT, prostate)HaidutはGeorgi Dinkovのペンネームです。

 

生体エネルギー学の臨床(6) プレグネノロン、プロゲステロンについて

ステロイド産生

コレステロールからプレグネノロンへの変換は全ての細胞のミトコンドリア内で生じ、甲状腺ホルモンが刺激する。老化でコレステロールが増加するのはステロイド産生低下による。老化でプレグネノロン、プロゲステロン、DHEAが低下するが、コルチゾールは増加する。思春期から30代半ばまではDHEAが上昇しコルチゾールのアンタゴニストとして働くと共にアンドロゲンの前駆物質となる。しかし、高コルチゾールが続くとDHEA合成層(網状帯)は萎縮し、コルチゾール合成層(束状帯)のみが残る。コルチゾールは性腺のステロイド合成を抑制しアロマターゼを活性化する。プロゲステロン、プログネノロン、DHEAを補充することで、コルチゾールを減らし、網状帯を再生し、性腺ホルモン合成を回復する。

 

プレグネノロ

プレグネノロン(>プロゲステロン)は最も強力なCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)インヒビターで、HPA軸を不活化し、副腎のコルチゾール合成を抑制する。

プレグネノロンはプロゲステロン、DHEA、テストステロンを増やし、成長ホルモンを減らし、甲状腺ホルモンを増やす(T4→T3への変換を促進)。DHT、アンドロステロンもT4→T3への変換を促進するが、コルチゾールは抑制する。

プレグネノロンはアロマターゼインヒビター(AI)で5ARアクチベーターであり、DHEAのエストロゲン化を防ぎ、DHTへの変換を促進する。プレグネノロンにエストロゲン抑制効果はないが、プロゲステロンになりアンタゴニストとなる。また、プレグネノロンとプロゲステロンは強力なアルドステロンアンタゴニストである。

プレグネノロンは代謝を活性化し、肥満とインスリン抵抗性に有効である。

 

プロゲステロン

プロゲステロンはグルココルチコイド受容体(GR)と鉱質コルチコイド受容体(MR)とエストロゲン受容体(ER)の最強のアンタゴニストでAIである。さらに、セロトニン合成ホルモン(TPH)を抑制し、甲状腺ホルモンを増加し、エンドトキシンを直接不活化しかつTLR4をブロックし、アドレナリンを抑制することで、代謝を促進し老化を予防する。プロゲステロンはGRアンタゴニストであるだけでなく、ACTH放出を減らし、コルチゾール合成酵素(11b-HSD1)を抑制することでコルチゾール合成を抑制する。

プロゲステロン代謝物である5αDHPとアロプレグナノロンは神経変性疾患で重要な役割を果たす神経ステロイドである。共にGABAアゴニストで、グリシン受容体を活性化し、5-HT3受容体をブロックして抗エンドトキシン効果がある。抗不安、抗うつ、抗攻撃性、抗てんかん、抗炎症効果があり、神経変性疾患から保護する。プレグネノロンもグリシン受容体を活性化する。

うつと依存症にはコリン系が深く関与し、プレグネノロン、プロゲステロン、DHEAはコリン受容体アンタゴニストとして働く。エストロゲングルタミン酸を増やしGABAを減らし興奮性に働くが、プロゲステロングルタミン酸を減らし、GABAを増やし鎮静性に働く。グルタミン酸はHPA軸を活性化しコルチゾールとGRを増やす。

 

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生体エネルギー学の臨床(5)エストロゲンについて

2002年のWHI試験で、ホルモン補充療法(HRT)は乳がんリスクを26%上昇させた。閉経でエストロゲンの総量(E1+E1S+E2+E3)は増加している。E2(エストラジオール)ではなく、プロラクチンとE1S(エストロン硫酸)による評価が必要である。乳がんはアロマターゼ欠損動物で発症しない。AI薬の代わりにプロゲステロンで代用できる。乳がん以外に、腎がん、子宮内膜がん、メラノーマはエストロゲン依存性である。ちなみに、アルコールはプロラクチンとエストロゲンを増加する。注)アロマターゼ:アンドロゲンをエストロゲンに変換する酵素

エストロゲンコルチゾールは胸腺を萎縮させて免疫能を低下させ、老化とがんの原因となる。エストロゲンの細胞増殖効果はヒスタミンとコリンを介する。ヒスタミンエストロゲン受容体を増やす。子宮頸がんはHPVではなくエストロゲンヒスタミンが主な原因で、プロゲステロンが抑止する。

エストロゲンはワーバーグ効果を引き起こす。エストロゲン受容体と類似する核内受容体であるエストロゲン関連受容体(ERRs)を通してHIF(低酸素誘導因子)などの発がんシグナルパスウエイが活性化し、解糖系の増加、乳酸産生の増加、脂肪酸酸化の増加、糖酸化の低下を引き起こす。ERRsはミトコンドリアの酸化代謝のマスターレギュレーターである。

ストレス、キセノエストロゲンBPABPS、フタル酸、イソフラボンレスベラトロールなど)、避妊薬は、エストロゲンアゴニストで、アンドロゲンと甲状腺のアンタゴニストである。飽和脂肪酸SFA)はエストロゲンアンタゴニストで、一価不飽和脂肪酸(MUFA)は中立、多価不飽和脂肪酸(PUFA)はエストロゲンアゴニストである。SFAとPUFAのエストロゲン受容体親和性は同じなので、SFAを倍量にすることでPUFAのエストロゲン効果を減らすことができる。また、重金属(カドミウム、ニッケル、鉛、鉄など)もエストロゲン性が高い。

コルチゾールはアロマターゼ発現を刺激しエストロゲン合成を増やす。エストロゲンはACTH分泌を刺激しコルチゾール合成を増やす。エストロゲンコルチゾールセロトニン合成とセロトニン受容体を増やす。セロトニンはACTH分泌を刺激しコルチゾールエストロゲンを増やす。エストロゲンコルチゾールセロトニンは相互に刺激しあい増加させる。これらの内分泌異常はミトコンドリア機能を低下させ、肥満、糖尿病、脳心血管疾患、自己免疫疾患、精神疾患、神経変性症、自己免疫疾患、がん、老化の原因となる。

 

エストロゲンSFA増加/PUFA低下、プロゲステロン、ナリンゲニン/アピゲニン(フィトプロゲステロン)、DHT、アスピリン、シプロヘプタジン/ケトチフェン/ファモチジン、ビタミンB群、E、A、K2、SERM(タモキシフェンなど)。

アロマターゼインヒビター:プロゲステロン、ビタミンE、A、K2、エモジン、ラパコン、Se、AI(アナストロゾールなど)

 

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生体エネルギー学の臨床(4)コルチゾールについて

コルチゾールは副腎皮質から分泌される生命維持に欠かせないホルモンである。主な働きは、抗ストレス作用(闘争か逃走)、糖新生(筋肉タンパク質をアミノ酸に分解し、肝臓でブドウ糖を合成)、脂肪分解(エネルギー供給)、抗炎症作用・免疫抑制作用である。コルチゾールが過剰なクッシング症候群では中心性肥満、糖尿病、高血圧、筋力低下、骨粗鬆症などを呈し、炎症による組織破壊が全身に及ぶ。慢性的なコルチゾール上昇は炎症を惹起する。そのメカニズムとして、エンドトキシンと細胞デブリス(破壊組織片)の関与が解明されている。
 免疫とは、体内に蓄積したゴミ(損傷/病的組織のデブリス)を掃除するためのシステムであり、生体が環境に適応してその形態形成維持(morphostasis)のために保有する機能である。特別な組織を攻撃し破壊殺傷することではない。生体の免疫応答を作動させる分子には、微生物特有の分子である病原体関連分子パターン(PAMP)と自己由来の起炎性因子であるダメージ関連分子パターン(DAMP)がある。PAMPとDAMPを認識する受容体(パターン認識受容体)にTLRなどが含まれ、PAMPとDAMPの重複認識が免疫応答を多様化し、慢性炎症の下地を構築する。
ストレスが原因であるPTSD患者は自己免疫疾患を合併しやすい。ストレス(コルチゾール)による腸管バリアの破壊によりエンドトキシンが血液への流入すると、TLR受容体を介してPAMPと認識され、慢性的な低グレードの炎症反応を引き起こす。エンドトキシンや細菌が特別な組織に蓄積すると、組織破壊が加速し、免疫系は組織の細胞デブリスに対する特別な抗体を産生するようになる。患者は特別な組織/器官の自己免疫疾患と診断されて、コルチゾールを投与されるが、そのカタボリック効果(異化)によりさらに組織は破壊され、さらに強力な免疫反応を誘導する悪循環を生み出す。コルチゾールは短期的には症候をマスクできても、長期的には全身の炎症状態を悪化させる。
また、ストレスや損傷により形成されて血中に放出された細胞デブリス、特にミトコンドリアDNAは、DAMPとして免疫応答を引き起こす。ミトコンドリアは細菌由来なため、免疫細胞はそのDNA構造を異物と認識する。血中の細胞デブリスはHPA軸を活性化するため、副腎は大量のコルチゾールを分泌し、細胞デブリスをさらに増やす悪循環を生み出す。
自己免疫疾患を含む慢性炎症性疾患の治療は、まず、ストレッサーを除去することが最も重要である。次に、組織のカタボリズム/損傷を止め、炎症を抑えることである。テストステロン、DHT、DHEA、プレグネノロン、プロゲステロンの様なアナボリック(同化)ステロイドは免疫応答を迅速に止め、コルチゾール効果をブロックする。ビタミンD、Aは直接的コルチゾールアンタゴニストである。
また、コルチゾールエストロゲンは胸腺を萎縮させ、免疫力低下により全てのがんの原因となる。コルチゾールミトコンドリアにおける脂肪酸酸化と脂肪合成を促進するためである。高炭水化物食は糖酸化によるエネルギー代謝の改善とともにコルチゾール(ストレス)を低下させ、胸腺を肥大させる。アスピリンとナイアシナミドも有効である。
低炭水化物食、ケト、絶食、運動はストレス(コルチゾール)を増やし、代謝を低下させ、肥満、インスリン抵抗性の原因となる。健康であることは安静時基礎代謝量(RMR)が高いことであり、ストレスで代謝量を高く維持することではない。絶食と運動が有効なのはRMRが高い人だけである。
注)参考文献を確認したい方は、Ray Peat Forum(https://raypeatforum.com/community/)でキーワード検索してください。(例えば、Haidut, cortisol, inflammation)HaidutはGeorgi Dinkovのペンネームです。