生体エネルギー学の臨床(11) ナイアシナミド(ニコチン酸アミド、ニコチンアミド)について

ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドNAD+)は、生体の全ての細胞に存在する普遍的な電子輸送体、補酵素、シグナル伝達分子で、細胞の機能と生存に不可欠である。

NAD+はナイアシナミド(NAM)より合成され、NAD/NADH比を増加することで、酸素呼吸(酸化的リン酸化)を活性化して、解糖系を抑制する。クレブス回路で産生されたCO2は乳酸合成を抑制する。また、NAMはミトコンドリア生合成を刺激し、グリコーゲン貯蔵を促進し、インスリン感受性を改善する。

NAMは脂肪組織の脂肪分解を抑制し、また、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT1)を阻害して、ミトコンドリアにおける長鎖脂肪酸代謝を抑制する。

NAMはヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC)インヒビターである。サーチュイン(SIRT)はNAD依存性HDACの一つである。SIRTにより、がんは脂肪酸酸化(FAO)と脂肪酸合成(FAS)を同時に亢進する。NAMはSIRTを抑制し、FAO/FASを抑制し、がん治療を促進する。また、NAMはHDACを阻害してT細胞を活性化し免疫能を改善し、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の抑制によりアポトーシスを防ぐ。

NAMはコルチゾール不活化酵素(11b-HSD2)を活性化し、コルチゾール合成酵素(11b-HSD1)を抑制し、コルチゾール合成を低下させる。また、SIRT1はエストロゲン受容体(ER)発現を増やすため、NAMは抗エストロゲン性であり、5-ARを活性化してDHT合成を増やす。

NAMはセロトニンのアンタゴニストでGABAアゴニストである。

NAMはNSAIDアスピリン含む)による胃の損傷を治療する。同様に、重曹、カフェイン、グリシンタウリン、B6も有効である。

NAMはSIRTインヒビターであるが、ニコチンアミドモノヌクレオチド(MNM)、ニコチンアミドリボシド(NR)、レスベラトロールはSIRTアクチベーターである。

ナイアシン(B3)はNAD+合成のためにNAMに変換される必要がある。NAMと異なり、ナイアシンヒスタミンセロトニンを分泌し、肝臓グリコーゲンを減らし、高インスリン血症を引き起こす

NAMは、流産、死産、先天性欠損症、子癇前症、うつ、PTSD、ALS、PD、AD、脳梗塞、肥満、T1D、T2D、心不全、ストレス潰瘍、アルコール性肝疾患、NAFLD、肝硬変、B型肝炎、腎不全、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症結核、リーキガット、エンドトキセミア、アレルギー、自己免疫疾患、免疫不全、骨粗鬆症サルコペニア、メラノーマ、乳がん前立腺がん、肝がん、膵がん、大腸がん、老化などを治療する。

 

注)参考文献を確認したい方は、Ray Peat Forum(https://raypeatforum.com/community/)でキーワード検索してください。(例えば、Haidut, niacinamide, SIRT)HaidutはGeorgi Dinkovのペンネームです。