スタチンで冠動脈カルシウムスコアが増加?

冠動脈カルシウムスコアが年に15%以上増加すると、将来心筋梗塞になるリスクが非常に高い。(Raggi P, Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology. 2004)
冠動脈カルシウムスコアの進行がスタチンにより1年で29.7%増加するが、スタチンとPCSK9阻害薬の併用により14.3%に低下するとする趣旨の論文が発表されたが、実は薬なしのコントロール群では5%以下であった。(Ikegami Y, npj Aging and Mechanisms of Disease. 2018)
スタチンで冠動脈カルシウムスコアが増加するのであれば、スタチンを内服する理由ってあるのかしら?

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鼻うがいしてみませんか?

新型コロナウイルスの主要な感染経路は空気媒介感染(飛沫感染エアロゾル感染)です。

のど風邪の原因であるコロナウイルスは主に上咽頭粘膜の細胞に感染します。PCR検査で上咽頭粘膜をこすって検体を採取するのは、口の奥の中咽頭粘膜よりも鼻の奥の上咽頭粘膜の方がウイルス量が多いからです。つまり、上咽頭粘膜が中咽頭粘膜よりも新型コロナウイルスの受容体の数が多いということです(Sungnak W 2020)。

咽頭は繊毛上皮細胞で覆われていて、免疫の監視役として多数のリンパ球が繊毛上皮細胞の間に入り込んでいます。風邪をひくということは上咽頭でウイルスと免疫細胞が戦闘状態となることを意味します。新型コロナウイルス感染症を含む風邪は上咽頭震源地であり、ウイルスから上咽頭を守るために鼻うがいが有効と思われます。

鼻うがいの効果

イギリス・エジンバラ大学のRamalingam S等は、食塩水の濃度が高い方がウイルスの増殖を抑え、鼻うがいは風邪の症状を軽くする効果があり、鼻うがいでコロナウイルスによる風邪が早く治ることを示しました。鼻うがいの効果には、①鼻から吸い込まれたウイルスや細菌などの病原体、ほこり、花粉、炎症物質を洗い流して上咽頭を清潔に保つ、② 鼻咽頭の繊毛上皮細胞の働きを良くする、③ 繊毛上皮細胞からの粘液の過剰な分泌を抑える、④ 鼻咽頭粘膜のむくみを改善する(高張食塩水の場合)、⑤ウイルスの増殖を抑える(食塩水から塩素イオンが上皮細胞に取り込まれ細胞内で抗ウイルス作用をもつ次亜塩素酸が作られる)、があります。

鼻うがいQ&A

Q1)鼻うがいに使う水は煮沸する必要があるか? A)日本の水質基準は厳しいので、飲料水として使用可能な水道水であればそのまま使っても大丈夫。煮沸した水を勧める根拠は、鼻うがいで水中の微生物(アメーバ)が鼻から脳に入り、アメーバ性髄膜脳炎を発症したという報告があるからです(Yoder JS 2012)。アメーバは塩素に弱く、塩素消毒された日本国内の水道水で感染の報告はありません。ただし、水道管貯水槽などの状態や環境にも左右される部分があるので、水道水が絶対に大丈夫だとは言い切れません。堀田修先生も2019年までは煮沸した水道水の使用をすすめていましたが、新型コロナウイルスウイルス感染症が登場してからは、鼻やのどに付着したウイルスをその場で手軽に取り除く必要が生じ、鼻うがいに煮沸なしの水道水を使用しています。

Q2)鼻うがいの後、洗浄液が鼻から流れ出るが問題ないか?A)頭の位置の変化で副鼻腔に入った洗浄液が排出されます。頭を下にすることで排出されます。

Q3)鼻うがいは1日に何回行えば良いか?A)1日2回、朝夕がおすすめですが、回数に制限はありません。

Q4)鼻うがいをしてはいけない人は? A)急性中耳炎、滲出性中耳炎、声帯麻痺、誤嚥を起こやすい人、膿性鼻汁の多い人です。ただし、中耳炎の予防には鼻うがいが役立ちます。鼻うがいで耳が痛くなりやすい人は、鼻うがいのときに頭を左右どちらかに傾けないようにして、洗浄液を鼻からゆっくりと注入するのがコツです。このときに自分の唾液や鼻うがいの洗浄液を飲み込んでしまうと、耳管に水が入って中耳炎を起こすことがあるので、洗浄液を飲み込まないように気をつけることが大事です。また、鼻腔の中に水分が残っている状態で鼻を強くかむことも中耳炎の原因になるので、やさしく鼻を軽くかみましょう。

Q5)洗浄液が鼻のどこかに溜まって腐敗したり、炎症の原因になることはないか?A)その 心配はありません。一時的に溜まっても鼻から排出されます。慢性的に副鼻腔にたまった膿みなどを洗い流す鼻うがいは、慢性副鼻腔炎の補助療法として推奨されています。

Q6)鼻うがいの洗浄液を作るとき特別の塩が必要か? A)精製塩で十分です。

Q7)洗浄液にヨード液を入れたら治療効果が高まるか? A)鼻うがい洗浄液にヨード液は 推奨できません。ヨード液過剰で甲状腺機能低下症の可能性あり(Sato K 2007)。ヨード液により免疫に役立っている鼻咽頭の常在細菌叢を破壊してしまいます。食塩水には抗ウイルス作用があるので、殺菌作用を強化する目的であれば、鼻うがいで使う洗浄液の食塩濃度を高めるのが最も効果的な方法だと思います。風邪予防のためなら違和感が最も少ない生理食塩水の濃度(0.9%)思いますが、風邪の治療が目的であれば1.5-2%程度の高張食塩水がおすすめです。

新型コロナウイルス感染症に鼻うがいが有効であるかどうかのエビデンスはありませんが、鼻うがいに関する多くの論文を考慮すると、新型コロナウイルス感染症の予防と、発症後の比較的早い段階での補助療法として、鼻うがいを導入する価値は十分あると思われます。

(痛くない鼻うがい、堀田修、2020)

食べ物で病気を治す - むらもと循環器内科 (muramo10.com)

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マグネシウム(Mg)と免疫

Mgは600以上の生物学的プロセスの不可欠な補因子である。(Caspi R., Nucleic Acids Res. 2011)Mgは酸化的リン酸化、エネルギー産生、タンパク質合成、糖分解、核酸合成に必要である。(Saris N.-E.L., Clin. Chim. Acta. 2000)Mgイオンは他のイオンの細胞膜輸送で欠かせず、神経興奮、筋肉収縮、心拍リズムを調節する。(Barbagallo M., Encycl. Metalloproteins. 2013)

血清でMgは3つの形で存在し、タンパク質と結合(25%がアルブミン、8%がグロブリン)、キレート錯体(12%)、イオン(55%)として存在する。(Saris N.-E.L., Clin. Chim. Acta. 2000)

Mgは免疫と強く関連する。免疫調節性ホルモンであるビタミンDの活性化、炎症反応の抑制、酸化ストレスの低下、T細胞毒性の調節、血管内皮機能の維持、凝固・血栓の抑制などの免疫反応に関与する。(Dominguez LJ, Nutrients. 2021)

重症で慢性的なEBV感染症や腫瘍を引き起こすXMENはMgチャンネルであるMAGT1の遺伝的欠損による疾患で、Mgが免疫でセカンドメッセンジャーとして重要な役割を果たしていることを初めて示した。(Li F.-Y., Nat. Cell Biol. 2011)また、MgはHBV感染症から肝細胞癌HCCへの発展の抑制にも重要な役割を果たす。(Liu Y., Oncotarget. 2016)

およそアメリカ成人の半分はMgの1日に推奨摂取量を摂っておらず、潜在的なMg欠乏がある。他のMg欠乏の要因には、酒、肥満・メタボリック症候群・糖尿病、慢性疾患(腎臓病、胃腸疾患など)、薬(利尿剤、インスリンPPIなど)、運動、ストレス、VD欠乏、老化などがある。潜在的なMg欠乏は一般的であり、Mg欠乏は免疫機能を損なう。(DiNicolantonio JJ, Open Heart. 2018)

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亜鉛について

亜鉛は自然免疫、獲得免疫の形成に欠かせません。亜鉛SARS-CovウイルスのRNAポリメラーゼ活性を抑制し細胞内のウイルスの複製を抑制します。(Baric RS,PLoS Pathog. 2010)亜鉛はCOVID-19の予防と治療に有効です。(Mossink JP. BMJ Nutr Prev Health 2020)
免疫機能の他に、抗酸化作用、血液凝固、創傷治癒、DNA転写、細胞分裂、糖代謝甲状腺機能、気分、ADHD、味覚、嗅覚、視覚に関与します。
私たちの体には正常に機能するために亜鉛を必要とする酵素が300もあり、およそ10万のタンパク質のうちの3000は亜鉛を必要とします。
亜鉛は多くの生物学的プロセスで重要な役割を果たしますが、体は亜鉛を貯蔵しないので、毎日食事から摂取する必要があります。アルコール依存症ベジタリアン、妊婦・授乳婦、消化管障害、鎌状赤血球症は亜鉛を欠乏しやすいです。
亜鉛欠乏の4徴は、食欲不振、うつ、味覚・嗅覚障害、風邪をひきやすい、です。子供ではフケが多い、爪周囲皮膚の逆むけ、皮疹などがみられます。アメリカ人で、45%が亜鉛を欠乏しています。血中濃度よりも4徴の確認が重要です。
亜鉛と銅の吸収は腸管で競合するので、亜鉛の摂り過ぎで銅欠乏のリスクがあります。亜鉛の過剰摂取は腸管細胞で金属に結合し吸収を阻むメタロチオネインの産生を増やします。メタロチオネインは亜鉛より銅に親和性が高いので、亜鉛でメタロチオネインが高くなると銅の吸収が減ると考えられています。対照的に、過剰な銅は亜鉛レベルに影響しません。銅欠乏の最も一般的なサインは貧血です。貧血が鉄に反応しない場合、銅に反応する可能性があります。
亜鉛は豆、ナッツ、赤肉、シーフードに豊富ですが、植物食のフィチン酸が吸収を阻むので、動物食の方がより吸収が良いでしょう。大人のRDA11mg/日です。
補足)イベルメクチン、ヒドロキシクロロキン、ケルセチンは亜鉛イオノフォア(イオンの生体膜透過性増加)として機能します。イベルメクチンを中心としたCOVID-19治療(ZID外来)は亜鉛、イベルメクチン、ビタミンDが中心となります。(つづく)
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一部の承認されていない新型コロナウイルス感染症の治療薬は深刻な危害を及ぼす可能性があります。
出典: 世界保健機関(WHO)
 
 
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悪いのはLDLじゃなくて植物油!

LDLコレステロールそのものは動脈硬化巣の泡沫細胞形成に関わらず、酸化変性したLDLがその原因であると考えられています。では、酸化LDLとはいったい何なのでしょうか?
LDL粒子の中で酸化変性しやすいのはコレステロールエステルやリン脂質の不飽和脂肪酸であり、活性酸素フリーラジカルなどによる攻撃の標的となっています。中でも、最も酸化しやすいのがオメガ6不飽和脂肪酸であるリノール酸です。酸化LDL仮説は酸化リノール酸仮説と言えるかもしれません。
今日、私たちの摂取カロリーの約20%を100年前には存在しなかった植物油から得ており、リノール酸の消費は劇的に増加しました。粥状動脈硬化症の形成に酸化LDLは重要な役割を果たしますが、それは酸化リノール酸や危険な酸化リノール酸代謝物質の作用によります。食事のリノール酸量(主に植物油)を減らすことは、LDLのリノール酸量を減らし、酸化LDLを減らし、粥状動脈硬化症と冠動脈疾患のリスクを減らします。ちなみに、スタチンで酸化LDLを減らすことはできず、泡沫細胞の形成を抑制することもできません。(つづく)
詳しくはFB特集記事「酸化LDLはリノール酸が酸化したLDL 」をご覧ください。
muramo10.com

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バターを摂ろう!

植物油は肥満や糖尿病などの慢性疾患の増加と強く相関します。最近になり、その因果関係は、ミトコンドリアで生じる活性酸素(ROS)がシグナルとなり、細胞を生理的で一時的なインスリン抵抗性にするとする考えにより説明が可能となりました。
インスリンは、体細胞には脂肪代謝から糖代謝に変更させ、脂肪細胞には糖と脂肪の吸収を促して脂肪を貯蔵させます。しかし、ROSによる生理的インスリン抵抗性が生じると、それぞれの細胞の代謝は柔軟になり、糖代謝の選択肢があっても脂肪代謝の継続が可能となります。
飽和脂肪酸の酸化によるROSの産生は多く、生理的インスリン抵抗性が生じ、脂肪が燃焼されます。しかし、不飽和脂肪酸の場合はROSの産生が少ないため、インスリンが効いて、脂肪が貯蔵されます。
さらに、ROSはSCD1と言う酵素の発現を調節して、体脂肪の飽和化を調節します。その結果、飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸比はROS産生量を左右し、エネルギー代謝に影響します。つまり、私たちは不飽和脂肪酸で肥り、飽和脂肪酸で痩せるのです。
植物油を全部やめて、飽和脂肪酸が豊富なバターを利用しましょう。乳製品にアレルギーのある方はココアバターがおすすめです。ナッツ、アボガド、オリーブオイル、ラード、鶏肉、豚肉は不飽和脂肪酸が多く注意が必要です。不飽和脂肪酸が少ない反芻動物の牛肉とラム肉がおすすめです。
詳しくはFB特集記事「植物油は肥満の根本的原因である(科学編)」をご覧ください。
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植物油は危険ですよ!

肥満、糖尿病、心疾患、がんなどの慢性疾患は増加の一途をたどり、現在アメリカ人の10人に6人に何らかの慢性疾患があります。

慢性疾患の原因として、タバコ、運動不足、アルコール多飲、食ベ物が挙げられますが、タバコは年々減少、運動量は年々増加、アルコール摂取量は横ばいであり、急増する慢性疾患との相関を認めません。

食べ物の中で問題視されることが多い穀物と糖の消費は20年前から減少しており、また、肉も鶏肉だけが増加して赤肉は減少しています。そんな中、植物油だけはこの100年で消費が激増しており、摂取カロリーの約20%に至っており、慢性疾患の増加と強く相関しているのです。

植物油の主成分であるオメガ6脂肪酸自体は人間の成長に必要であり不健康なものではありませんが、生きるために必要なオメガ6脂肪酸はごくわずかであり、過剰なオメガ6脂肪酸は数多くの疾患の原因となることが明らかとなっています。

そのメカニズムとして、6/3比の上昇によりオメガ3脂肪酸の機能低下が関与します。また、植物油は非常に酸化しやすく、過酸化脂肪はフリーラジカルとなって細胞を傷害します。加熱により発生するトランス脂肪酸アルデヒドなどの副産物による傷害も非常に深刻です。

バターやラードなどの動物油は心筋梗塞のリスクがあり植物油が安全であるとのガイドラインを信じて、植物油の消費を拡大してきましたが、ランダム化比較試験では真逆の結果が出ています。

植物油は人間にとって異物であり、私たちの健康の脅威でしかありません。人工的な植物油を食生活から完全に排除し、自然の恵みである動物油脂に回帰することが望まれます。

詳しくはFB特集記事「植物油は危険である(疫学編)」をご覧ください。

 

#植物油 #シードオイル #オメガ6脂肪酸 #動物油 #慢性疾患

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