エビデンスに基づく医療って言うけど・・

 エビデンスに基づく医療(EBM)とは、臨床論文を根拠に治療を選択する医療を言います。大学病院を含めた全ての病院で診療の礎とする方針です。
臨床試験が大規模になるほど、巨額な予算がかかるため、ほとんどの場合、製薬会社がスポンサーとなります。研究者には利益相反が必ず生じるので、商品(薬剤)を否定する論文が発表されることはありません。つまり、企業がスポンサーである臨床試験に真実はあり得ないのです。
しかし、残念なことには、大学も学会も、公明正大なはずの医学雑誌まで、スポンサーなしには成立しない世の中なのです。NEJM誌の副編集長を20年務めたマルシア・エンジェルは、2008年のJAMA誌で「医者はもはや、正当な信頼できる情報を医学論文に頼ることができない」と嘆いています。
日常臨床で最も問題なのは、診療ガイドラインがこのような論文に基づき改定を繰り返していることです。ほとんどの医師は診療ガイドラインを絶対と信じ、自分で考えようとはしません。僕も開業医になるまでの約20年間、アメリカ心臓協会(AHA)を盲信していました。現在は、スポンサーの関与、論文執筆者の研究歴とCOIを確認してから、論文を吟味する様になりました。
砂糖まみれのシリアルが、心臓に良いはずありません。

コレステロールは悪くない、だからスタチンは必要ない

 コレステロールはそもそも悪者ではありません。なので、スタチンで治療するメリットはほとんどありません。スタチンが有効なのは過去に心筋梗塞の既往のある50才以下の男性だけで、全ての老人と女性には無効です。二次予防のために、5年間スタチンを飲んで、死亡のNNTは83(83人飲んで1人だけ死亡を免れる)、心筋梗塞のNNTは39です。しかも、糖尿病のNNHは50(50人飲んだら1人は糖尿病になる)、筋肉障害のNNHは10です。一次予防になると心筋梗塞のNNTは217ですが、死亡の改善は得られません。スタチンの効果はコレステロール低下によるものではなく、抗炎症効果によると言われています。クルクミンやEPA/DHAで十分に代用可能ですし、副作用の心配も全くありません。スタチンは強力にLDLコレステロールを低下させますが、本当の悪玉であるsmall dense LDLを減らしません。糖質制限により、中性脂肪が低下し、HDLは上昇し、small dense LDLが低下し、一石三鳥の効果が得られます。詳細はフェイスブック・ノート「コレステロール仮説は本当に正しいか?」をご覧ください。

高血圧はメタボの最初のサイン

 血圧が高くて初診される方のほとんどがメタボリック症候群(メタボ)です。だから、血圧をさげるにはメタボの原因であるインスリン抵抗性を改善しなければなりません。最近の降圧薬は強力なので血圧コントロールは可能ですが、メタボを改善しない限り薬は増える一方です。インスリン抵抗性の主な原因は糖質の過剰摂取なわけですから、高血圧の治療に糖質制限は絶対に必要です。酒と砂糖(果糖)も、脂肪肝を引き起しインスリン抵抗性を増悪させます。糖質制限による塩分の排泄増加による浮腫みの改善も血圧低下に貢献します。塩分制限よりも糖質制限の方がはるかに重要です。肥満じゃないから、メタボじゃないとは言えません。実際、肥ってない人の40%にインスリン抵抗性を認めます。本態性高血圧の大半はメタボと言っても過言じゃありません。ただ、ごく稀ですが、二次性高血圧の方もいるので、血液検査による鑑別診断は必要です。詳細はフェイスブック・ノートの「Fat Chance(砂糖に隠された真実) ロバート・ラスティグ」を参照してください。

奇跡のミネラル Mg

 キャロリン・ディーンの「マグネシウムの奇跡」を読んで、マグネシウム(Mg)のサプリを摂取したとろ、持病の群発頭痛と上室性頻拍症が無くなってしまいました。さらに、睡眠が改善し、血圧が下がり、便秘が改善し、こむら返りが無くなりました。早速、不整脈やこむら返りの患者にMgサプリを薦めたところ、多くの方が症状の改善を実感されています。私たちの80%がMg不足です。土地が痩せて農作物のMg含量が低下している上に、加工食品や清涼飲料水などによりリンの摂取が増えてMgの吸収が低下しているからです。また、アルコールや利尿剤はMgをさらに欠乏させます。また、Mgと同時にカリウムも欠乏している事が多いです。どちらも緑野菜などで補充できますが、サプリが必要な方も少なくありません。詳しくは、フェイスブック・ノート「マグネシウム 奇跡のミネラル」をご覧ください。

ビタミンD:驚きの健康効果

ビタミンDは日光浴により皮膚で合成され、体内を循環し全身の細胞で生理機能を発揮するので、ホルモンと言う方が正確かもしれません。ビタミンD受容体は細胞核にも存在し、細胞の増殖、分化にも関与しています。ですから、ビタミンDの欠乏は、カルシウム代謝だけでなく、感染症、自己免疫疾患、がん、循環器疾患、認知機能など多くの疾患と関連します。当院でビタミンD血中濃度を調べたところ、多くの人が欠乏状態(<20ng/ml)にあることが分かりました。日光浴だけでは十分ではなく、外因性のビタミンDは不可欠です。現実にはサケやイワシなどから十分に摂取するのは難しく、サプリメント(D3)が必要な方がほとんどです。D3の補充はインフルエンザワクチンより有効です。詳しくはフェイスブック・ノート「ビタミンD:驚きの健康効果」をご覧ください。

塩分制限は健康を害する

「塩分は血圧を上げる」ことは常識と考えられています。しかし、正常血圧の80%は塩を摂っても血圧は上昇しません。境界型高血圧の75%、高血圧患者でも55%は塩に感受性がありません。それどころか、塩分制限により、全体の40%の人の血圧が上昇するのです。(正常の60%、境界型高血圧の40%、高血圧の33%)
冷蔵庫が発明される以前の1900年代前半と比べて、塩の摂取量は1/10から1/2に減っているにも関わらず、高血圧は10%から30%に増えているのです。一方、糖の摂取量はこの間に20-30倍に増加しています。高血圧と関連があるのは塩ではなくて糖なのです。
持続的な塩分制限により、塩の再吸収のため腎臓ホルモン(レニン・アルドステロン)の分泌が増加しますが、インスリンの分泌も増加します。高インスリン血症はインスリン抵抗性を招き、肥満、高血圧、糖尿病、腎臓病の原因となります。
諸悪の根源は糖であって塩ではありません。むしろ、塩は慢性疾患の原因ではなく解決策かもしれません。少なくとも1日8-10gの塩(3-4gのナトリウム)の摂取が必要です。詳しくはフェイスブック・ノート「The Salt Fix(塩分の調整)」を参照してください。

フェイスブック・ノート記事一覧

・The Great Cholesterol Con(コレステロール仮説に大反対)
・Goodbye, Pills & Needles 糖尿病治療に薬はいらない
・Superfuel(脂肪の最適化で最大の健康を得る) ジェームス・ディニコラントニオ
・Healthy Gut, Healthy You(健康な消化管は私たちを健康にする
・Jason Fung 'DIABETIC CODE'ジェイソンファングの糖尿病コード
・コレステロール仮説は本当に正しいのか?
・マグネシウム 奇跡のミネラル
・ビタミンD 驚きの健康効果
・Obesity Code 肥満のメカニズムと治療(ジェイソン・ファング)
・間欠的断食(Intermittent Fasting)のすすめ
・Why We Get Fat 私たちはなぜ肥るのか(ゲーリー・トーベス)
・胃酸逆流症(GERD)の治療と問題点
・Fat Chance(砂糖に隠された真実) ロバート・ラスティグ
・カロリー計算を止めて、心血管疾患を減らす食事を摂ろう
・The Longevity Diet(長寿ダイエット)ヴォルター・ロンゴ
・Genius Foods マックス・ルーガベー
・アルツハイマー病の終焉 デール・ブレデセン
・安定狭心症へのPCIの適切性
・プラントパラドックス(植物は栄養でもあり毒でもある) スティーヴン・ガンドリー
・The Salt Fix(塩分の調整) ジェームス・ディニコラントニオ
・機能性医学(ファンクショナル・メディスン)
・骨粗鬆症に薬物治療は必要ない
・実践マインドフルネス
グルタチオン点滴治療(自費診療)