食事で病気を治す



診療科目: 内科 ・ 循環器内科 ・ 糖尿病 ・ 肥満症

診療時間: 月・火・木・金  
      午前9:00-12:30、 午後1:30-5:00
      水・土  午前9:00-12:30
休  診: 日曜・祝祭日
住  所: 〒004-0052 
      札幌市厚別区厚別中央2条4丁目9−15
       新さっぽろ中央メディカルビル3F
電  話: 011-802-1000  
F A X : 011-802-1020

ごあいさつ
循環器専門医から開業医になって、初めて、現代病の大半を占める慢性疾患を現状の医療で治療することは不可能であることに気付きました。臓器疾患別に、症状から診断し治療する現状の医療は、逆症療法でしかないので、症状が軽減することはあっても、慢性疾患が治ることはありません。病気の根本原因を見出して除去しない限り、慢性疾患が治ることはないのです。
以来、食べ物を見直し、足りない栄養素を補充して、ライフスタイルと生活環境を修正し、できるだけ少ない薬で治療するよう心がけています。全ての慢性疾患の治療において、1.食事療法(低糖質・高脂肪・中蛋白質)、2.マイクロバイオームの健全化、3.ミトコンドリア機能の活性化、の3点の改善が重要であると考えております。
『害をなすなかれ』『食べ物が薬である』ヒポクラテスの金言がライフワークとなりました。薬をできるだけ使わずに健康を身に付ける医療を追求できたらと考えております。

開業医だからできること

開業した当初、患者もまばらですることがありませんでした。時間だけは豊富にあったので、手当たり次第に本を読みました。その中に江部康二先生の糖質制限の本がありました。「炭水化物、タンパク質、脂肪の中で血糖を上げるのは炭水化物のみ。こんな当たり前なことすら知らない医者がいる。」この書き出しを読んで、思わず赤面したことを今もはっきりと覚えています。自分が正にその一人でした。あわてて、江部先生のブログを7年分完読したら、糖質制限治療への疑念は吹き飛び、すっかり信者へと変わっていました。同時に、ガイドライン治療を盲信する姿勢を改め、自ら病気の根本原因に目を向けるようになりました。
以来、自身で丸4年糖質制限を実践するとともに、糖質制限による糖尿病治療外来を続けています。もっともっと詳しく知りたくて、海外の文献も読むようになり、さらに糖尿病の理解が進んだと思います。カロリー制限と薬物治療による血糖コントロールにしか目を向けなかった頃を振り返り、わずか4年なのですが隔世の感を禁じ得ません。これって、開業医だからこそできた転身だと思います。肩書もしがらみもないので、間違いを修正することにためらいはないし、周りの目を気にする必要もありません。正しいと信じた道を、躊躇することなく選択することができるからです。
現在は、肥満や糖尿病に対しての糖質制限治療を超えて、一歩先の栄養ケトーシスにより、多くの慢性疾患(脂質異常症、心疾患、神経変性疾患、癌、過敏性腸症候群、自己免疫疾患、精神疾患など)の治療や運動能力の向上の役に立ちたいと夢見ています。
写真は過去2年に読んだ本です。今年に入ってからはkindleで電子本を読んでいます。開業して、本当に良く勉強する医者になりました(笑)。

2型糖尿病に有効な薬ってどれ?

2型糖尿病に有効な薬ってどれ?2型糖尿病の人は血糖が高くなるだけじゃなくて、細胞内にも糖が溢れています(オーバーフロー現象)。身体中に溢れた糖を外に出さないことには治りません。だから糖を摂って良くなるなんてことはあり得ないわけです。糖質制限の話はさておき、糖尿病治療薬は有効性を考えてみます。
血糖が高いのだから血糖は下げた方が良い、間違いありません。しかし、UKPDS試験、ACCORD試験っていう有名な臨床試験で、インスリンやSU剤で、積極的に血糖を下げたにもかかわらず、心疾患や死亡例を減らすことができませんでした。治療で生命予後が全く改善しなかったということです。
2型糖尿病は、インスリンの効きが悪くなり血糖が高くなる病気ですから、病気の本態はインスリン抵抗性です。その原因は高インスリン血症です。だから、血糖を下げると共に、インスリンも減らす治療じゃないといけません。
インスリンやSU剤で血糖が下がるのは、インスリンを増やすことにより、血管内の糖を細胞内に無理やり押し込むことによります。血糖は下がっても、細胞内は糖でさらに溢れ返ります。血管に良くないものは、細胞にも良くないに決まっています。そうやって考えると、インスリンを増やす薬:インスリン製剤、SU剤(アマリールなど)、チアゾリジン誘導体(アクトス)による治療が、間違いだったってことが理解できるでしょう。
インスリンを増やすことなく血糖を下げる薬が望ましいわけです。現在使える薬の中では、αグルコシターゼ阻害薬(グルコバイ・ベイスン・セイブルなど)やSGL2阻害薬(スーグラ・フォシーガ・カナグルなど)はインスリンを増やさずに血糖を下げるので有効です。αグルコシターゼ阻害薬は糖の吸収を減らし、SGL2阻害薬は糖を尿に排泄することで、どちらも糖を身体から減らしていますね。
インスリンは肥満ホルモンでもあるので、体重が増える薬はダメってことになります。αグルコシターゼ阻害薬やSGL2阻害薬は体重が減ります。作用は少し複雑ですが、注射薬であるインクレチン関連薬(GLP1アナログ:ビクトーザ、パイエッタなど)も体重が下がり有望です。その他、ビアグナイド(メトグルコ)やDPP4阻害薬も悪くはありませんが、身体の糖は減りませんし、体重も減りません。
皆さんはどんな薬を飲まれていますか?
写真はオーバーフロー現象の説明です。乗客がブドウ糖、駅員がインスリン、列車が細胞、プラットホームが血管です。
詳細はフェイスブック・ノートの「Jason Fung 'DIABETIC CODE'ジェイソンファングの糖尿病コード」を参照してください。

2型糖尿病は肝膵の異所性脂肪蓄積による

ジェイソン・ファングは『内臓に蓄積した異所性脂肪による生理的欠陥』により2型糖尿病を発症すると説明しますが、これも画期的でとても納得がいきます。
異所性脂肪の蓄積には2相があります。第1相は、肝臓と筋肉に蓄積した異所性脂肪によるインスリン抵抗性の上昇です(脂肪肝と脂肪筋)。第2相は、膵臓に蓄積した異所性脂肪による膵β細胞の機能低下です(脂肪膵)。
肝臓の細胞はブドウ糖で溢れた(オーバーフロー)状態を解除するために、ブドウ糖から脂肪を生成します。脂肪が外に送り出されるよりも多く生成されると脂肪肝になります。脂肪肝は体全体の肥満より、インスリン抵抗性や糖尿病への決定的な踏み石となります。つまり、インスリン抵抗性の大部分は、ブドウ糖のオーバーフローにより膨れ上がった脂肪肝によるものなのです。
インスリンの産生低下は、膵臓が消耗したためではなく、膵臓に脂肪が蓄積したことによります。膵臓に蓄積した過度の脂肪は、2型糖尿病患者にしか見られません。膵臓に脂肪が多いほど、インスリンの分泌が少なくなります。胃バイパス手術や断食により、膵臓の脂肪が減り、インスリン分泌能が戻ることが分かってきました。
肥った患者であっても、異所性脂肪の蓄積がなければ、インスリン抵抗性は進展しません。これは、肥満患者のおよそ20%は、インスリン抵抗性がなく、代謝異常もないことを説明します。逆に、正常体重でも、40%に代謝異常を認めますが、これは異所性脂肪の蓄積によるインスリン抵抗性によるものと考えられます。
2型糖尿病は、脂肪肝によるおよそ10年のインスリン抵抗性の増大の後に、脂肪膵によるインスリン分泌機能低下に加わり、発症するものと考えられます。
詳細はフイスブック・ノートの「Jason Fung 'DIABETIC CODE'ジェイソンファングの糖尿病コード」を参照してください。

大食するから肥るのではなく、肥るから大食する

 慢性的にインスリンが高いと、脂肪細胞から分泌された満腹ホルモン(レプチン)のシグナルを抑制するため、満腹中枢である視床下部腹部内側核は飢餓状態と感じるようになります。これが交感神経系の活動を減らし(怠け)、迷走神経活動を増やします(大食)。同様に中脳の腹側被蓋野に対するレプチンシグナルも抑制することにより、報酬感を高め大食に至らしめます。また、ストレスによる扁桃体の慢性的な活性化によりコルチゾールが上昇すると、インスリン抵抗性が悪化し、インスリンがさらに増え、体重が増加します。脳の3つ経路(飢餓、報酬、ストレス)が同時に働くことで、私たちは肥満やメタボリックシンドロームを避けることができなくなります。この大脳辺縁系のトライアングルは、バミューダトライアングルと同様に、一度入り込んだら出られません。
肥満は脳のホルモン異常の結果なのです。大食して怠けるから肥るのではなく、肥った結果、大食して怠けるのです。この要となるのがインスリンです。体重に関わらず、多くの人のインスリンは、同じ量の糖に対して、30年前より倍分泌されています。人類史上、私たちは最も高インスリン血症になっています。写真は1歳で20kgの赤ちゃんです。肥っているのは意志が弱いからでしょうか?詳細はフェイスブック・ノートの「Why We Get Fat 私たちはなぜ肥るのか(ゲーリー・トーベス)」を参照してください。

砂糖(果糖)は毒である

 砂糖はブドウ糖グルコース)と果糖(フルクトース)からなります。ブドウ糖は全ての臓器で利用される良質な炭水化物であり、80%が全身で利用され、残りの20%が肝臓で代謝されます。その多くはグリコーゲンとして貯蔵され、残りがTCA回路でATPに変わり、脂肪になるのはごくわずかです。
アルコールは10%が消化管、10%が脳や筋肉などで利用され、残りの80%が肝臓で代謝されます。有毒なアセトアルデヒドに分解され、活性酸素を生成します。アセトアルデヒドは酢酸に変わり、TCA回路で利用されますが、大量で処理しきれい分は脂肪(VLDL)に変換されます。これが内臓脂肪として蓄積し、インスリン抵抗性を引き起します。
果糖は100%が肝臓で代謝され、グリコーゲンとして貯蔵されることはなく、ほとんどすべてがピルビン酸に代謝され、TCA回路に運ばれますが処理しきれないため、多くがアルコールと同様に脂肪に変換されます。また、果糖の初期代謝に大量のATPが消費されるため、尿酸が増加し、痛風と高血圧の原因となります。
果糖は脳で代謝されないので、アルコールの様な急性の副作用はありませんが、高血圧、冠動脈疾患、脂質異常症、膵炎、肥満、脂肪肝、依存症など、アルコールと同じ慢性的な副作用を引き起こします。果糖とアルコールは、代謝のメカニズムが同じであり、「果糖は酔わないアルコール」とも言えるでしょう。アルコールには規制がありますが、砂糖(果糖)にはありません。砂糖の規制をしない限り、増え続けるメタボリックシンドロームを止めることはできないでしょう。詳細はフェイスブック・ノートの「Fat Chance(砂糖に隠された真実) ロバート・ラスティグ」を参照してください。

米国大人の半分が代謝異常

 米国の大人の肥満(BMI>30)の20%には全く病気がありません。一方、正常体重(残り)の40%に、高血圧、糖尿病、脂質異常、心筋梗塞脳卒中認知症、がんなどの慢性疾患を認めます。米国大人の半分に代謝機能異常を認めることになります。これらの慢性疾患の主な原因はインスリン抵抗性です。インスリン抵抗性の原因は、高インスリン血症であり、炭水化物の過剰摂取です。つまり、食事を低糖質食(低炭水化物食)に変えることで、多くの疾患を回避することが可能なのです。
膵臓からインスリンがだけでなく、グルカゴンというホルモンが分泌されます。インスリンは摂食とエネルギー貯蔵という同化反応(anabolism)に、グルカゴンは断食とエネルギー燃焼という異化反応(catabolism)に働きます。
インスリン・グルカゴン(IG)比が低いと、カロリー制限をしなくても断食と同じような効果が得られます。つまり、インスリン感受性が亢進し、オートファジーが亢進し、脂肪分解が進み、褐色脂肪細胞が増加します。低糖質食では断食と同様に異化が亢進するので、活力がみなぎり、気分良く生活ができます。低糖質食で蛋白質を摂取してもIG比は変わりません。低糖質食では断食と同様に、糖新生の必要が高いので、蛋白質を大量に摂取してもケトーシスは維持できます。
低IG比を維持するために、1.糖質を制限する(1日50g以下)、2.タンパク質を優先的に摂取する(体重1kgあたり1-2g)、3.足りないエネルギーを脂肪で満たす(動物脂肪、ココナッツ、オリーブオイル、アボガド)、の3ステップが必要です。詳細はフェイスブック・ノートの「Fat Chance(砂糖に隠された真実) ロバート・ラスティグ」を参照してください。