2型糖尿病に有効な薬ってどれ?

2型糖尿病の人は血糖が高くなるだけじゃなくて、細胞内にも糖が溢れています(オーバーフロー現象)。身体中に溢れた糖を外に出さないことには治りません。だから糖を摂って良くなるなんてことはあり得ないわけです。糖質制限の話はさておき、糖尿病治療薬の有効性を考えてみます。
血糖が高いのだから血糖は下げた方が良い、間違いありません。しかし、UKPDS試験、ACCORD試験っていう有名な臨床試験で、インスリンやSU剤で、積極的に血糖を下げたにもかかわらず、心疾患や死亡例を減らすことができませんでした。治療で生命予後が全く改善しなかったということです。
2型糖尿病は、インスリンの効きが悪くなり血糖が高くなる病気ですから、病気の本態はインスリン抵抗性です。その原因は高インスリン血症です。だから、血糖を下げると共に、インスリンも減らす治療じゃないといけません。
インスリンやSU剤で血糖が下がるのは、インスリンを増やすことにより、血管内の糖を細胞内に無理やり押し込むことによります。血糖は下がっても、細胞内は糖でさらに溢れ返ります。血管に良くないものは、細胞にも良くないに決まっています。そうやって考えると、インスリンを増やす薬:インスリン製剤、SU剤(アマリールなど)、チアゾリジン誘導体(アクトス)による治療が、間違いだったってことが理解できるでしょう。
インスリンを増やすことなく血糖を下げる薬が望ましいわけです。現在使える薬の中では、αグルコシターゼ阻害薬(グルコバイ・ベイスン・セイブルなど)やSGL2阻害薬(スーグラ・フォシーガ・カナグルなど)はインスリンを増やさずに血糖を下げるので有効です。αグルコシターゼ阻害薬は糖の吸収を減らし、SGL2阻害薬は糖を尿に排泄することで、どちらも糖を身体から減らしていますね。
インスリンは肥満ホルモンでもあるので、体重が増える薬はダメってことになります。αグルコシターゼ阻害薬やSGL2阻害薬は体重が減ります。作用は少し複雑ですが、注射薬であるインクレチン関連薬(GLP1アナログ:ビクトーザ、パイエッタなど)も体重が下がり有望です。その他、ビアグナイド(メトグルコ)やDPP4阻害薬も悪くはありませんが、身体の糖は減りませんし、体重も減りません。
皆さんはどんな薬を飲まれていますか?
写真はオーバーフロー現象の説明です。乗客がブドウ糖、駅員がインスリン、列車が細胞、プラットホームが血管です。師匠であるJason Fungのブログから拝借しました。

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