スタチンでどれだけ心筋梗塞は防げるの?

「LDLコレステロールは低ければ低い方が良い」と学会が主張する最大の根拠がメタアナリシスです。複数のランダム化比較試験(RCT)の結果を統合し分析する論文で、最も信頼性が高い根拠とされています。しかし、倫理規制が敷かれる前のRCTばかり集めて、それ以降のRCTを無視したメタアナリシスは、選択バイアスにより信頼性を端から失っており、スタチン治療の有効性を主張する根拠とはなり得ません。

百歩譲って、スタチンの有効性を認めたとしたら、実際のところ、どれくらい有効なのでしょうか?あるエンドポイントに到達する患者を1人減らすために、何人の患者の治療を必要とするかをNNT(Number needed to treat)と言います。心筋梗塞既往患者が5年間スタチンを内服した場合の心血管イベント予防のNNTは39です。つまり、5年間治療しても、39人のうち心筋梗塞を回避できるのは一人だけということです。

スタチンで心血管イベントが35%減少するという話は相対的効果であって、絶対的効果は微々たるものでしかないのです。新規糖尿病発症のNNTが50、筋肉傷害のNNTが10であることを考えると、スタチン治療にメリットがあるとはとても思えません。

また、スタチンの効果を平均余命の改善で評価した論文では、5年間スタチンを内服すると、一次予防で3.2日、二次予防で4.1日延長するとされています。どちらにしても微々たる効果しか得られないことが実感できたのではないでしょうか?

「60歳以上は、コレステロールが高い方が寿命が長い」との事実を無視して、学会はさらにコレステロールを下げる方向に向かっています。肝臓のLDL受容体を分解しLDL除去能力を低下させるPCSK9と言う酵素を阻害する薬(レパーサ)でLDLを30mg/dL近くまで下げるRCTの結果、心血管エベントが有意に減ったと大騒ぎしているのです。しかし、その裏で、有意ではありませんでしたが、総死亡も心血管死も増加したのです。死亡が増える薬にどんな価値があるのでしょうか?さらに興味深いことには、4年間予定の試験がわずか2年で中止となったことです。表向きには結果が非常に良かったからとなっていますが、死亡に有意差が出るのを恐れたとしか思えません。ちなみに、この薬は注射薬である上に、3割負担でも年に18万円もかかります。

脳の60%が脂質で、その半分がコレステロールで出来ています。コレステロールは、細胞膜、ホルモン、ビタミンD、胆汁など、生体に不可欠な物質です。それでも、やっぱり、コレステロールは低ければ低い方が良いと思いますか?(つづく)

「スタチンって本当に健康に役立っているの?」も参考にしてください。

 

むらもと循環器内科  
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