成人の健康のために骨格筋の維持はとても重要である。加齢、栄養不足、座ってばかりの生活、持病などにより、筋肉量や筋力が低下し、自立性を失い、最終的にフレイル、サルコペニアに至る。
筋肉のタンパク質合成のためには、情報伝達因子であるmTORC1の活性化が必要である。若者はインスリンとロイシンによりmTORC1を刺激するが、成人になるとインスリンの感受性が低下するため、刺激はロイシンのみになる。
mTORC1活性化のためには、1食につき2.5g以上のロイシンが必要であり、タンパク質に換算するとおよそ30gが必要となる。加齢による同化抵抗性はロイシンにより打破できるが、逆に食事に十分なロイシンが含まれないと、筋肉のタンパク質異化の状態が続き、筋肉量は減っていく。
他に、タンパク質摂取量の増加は満腹感を満たし、熱発生を増やし、筋肉量を減らすことなく体重や脂肪量を減らし、肥満の予防や治療の効果的な戦略となる。
また、大量のタンパク質食が腎機能障害や骨の脆弱化の原因とはならない。
成人の健康のためには、従来の推奨量(RDA)0.8g/kg/日では十分ではなく、今日は1.2-1.6g/kg/日の質の高いタンパク質の摂取が推奨されるようになっている。